『オールオン4を勧められたけれど、本当に自分に合っているのかわからない』
『総額を聞いて驚いた。この費用に見合う治療なのだろうか』
『残っている歯を全部抜くと言われて、怖くなってしまった』
このようなお話をうかがうことは少なくありません。実は、オールオン4で後悔されるケースの中には「4本のインプラントで治療したこと」に由来する点が多くあります。オールオン4という治療のインプラントの本数については、患者様向けの解説ではあまり語られてこなかった、歯科医院側の事情もあります。
大阪・天王寺区でインプラントと入れ歯の両方に対応するヤスデンタルクリニックでは、インプラントオーバーデンチャーをはじめとする多数歯欠損の治療を専門的に行っております。他院でオールオン4を勧められて迷われている方、すでに治療を受けて不具合を感じておられる方のご相談も、院長の松井泰隆が対応しております。この記事では、良い面だけでなく、提供する側の事情も含めて、オールオン4について正直にお伝えします。
目次
後悔につながりやすい、オールオン4のデメリット

オールオン4をされた方の中には、「手術が思いのほか大変だった」「歯磨きがしにくい」「治療費用が高かった」など、治療後に後悔される方もいらっしゃいます。
ほかにも、残っている歯を抜かなければならないことや、ご自身で取り外して清掃できないこと、人工歯の破損やインプラントにトラブルが起きた際に修理が大掛かりになりやすいことなども、治療前に知っておきたいデメリットです。
もちろん、オールオン4そのものが悪い治療というわけではありません。条件が合えば、固定式の歯でしっかり噛めることは大きなメリットです。
しかし、私が特に知っていただきたいのは、「なぜ多くのオールオン4は、たった4本のインプラントで片顎すべての歯を支えるのか」という点です。
実は、この「4本」という本数には、患者様にはあまり知られていない治療上の事情があります。
なぜオールオン4は「インプラント4本」で提供されているのか

オールオン4は、4本のインプラントで片顎12本の歯すべてを支える治療方法です。
しかし、患者様の年齢や性別、体格や骨格、骨の状態、噛む力などは一人ひとり異なりますが、オールオン4では基本的に「4本」という同じ本数のインプラントで歯を支えることになります。
世界的な潮流としては、上顎では7本、下顎では6本程度のインプラントで全体を支えることで、より安定し、長期的にも有利であると考えられています。
では、なぜオールオン4では4本なのでしょうか。
インプラントの本数を増やせば、それだけ治療費用も高額になる傾向にあります。
オールオン4は、インプラントの本数を極限まで減らしながら、固定式の歯を支えることを可能にした治療方法です。
本数を少なくすることで、患者様の外科的・経済的な負担を抑え、治療を受けやすくすることで、世間一般的に普及しやすくした治療法といえます。
一方で、「4本で治療が成立すること」と「すべての患者様にとって4本が最適であること」は、まったく別の話となります。
例えば、年齢が若く、体格がしっかりしていて噛む力が強い方と、ご高齢で華奢な体格をされており、噛む力がそれほど強くない方とでは、インプラントにかかる負担は大きく異なります。
年齢や骨の量や質、骨格、噛む力、噛み合わせなどによって、本来必要となるインプラントの本数も変わってきます。
だからこそ、「オールオン4だから4本」と最初から決めるのではなく、その患者様にとって本当に4本で十分なのかを診断することが非常に重要なのです。
歯科医師が本音ではインプラント6本以上で治療したいと考える理由
リスク管理の上でも、インプラントは1本でも多く入れることで、1本あたりにかかる力の負担を分散することができます。
そのため歯科医師の本音としては、骨の量や費用、外科的な侵襲が許されるのであれば、少しでも多くのインプラントを入れて、余裕を持った設計にしたいと考えるのが正直なところです。
世界的に最も有名なインプラントの教科書の一つに「ITI Treatment Guide」があります。
数多くの論文をもとに、科学的根拠(Evidence Based Medicine)に基づいて書かれた、いわばインプラント治療のバイブルともいえる書籍です。
このITI Treatment Guideでも、無歯顎に対する固定式インプラント治療では、6本以上のインプラントを用いた治療設計やデータが、主に数多く記載されています。
特に注意が必要なのが、上顎のインプラント治療です。
上顎は下顎と比べて骨質が柔らかく、さらに上顎洞や鼻腔などの空洞があるため、インプラントを入れられる骨の量や位置にも制限があります。
また人間の体の構造上、上顎は頭蓋骨に固定され、下顎が上下に動くことで食べ物を噛むため、上顎の方が噛む力を受ける側となり、負担も大きくなります。
イメージとしては、上顎が「受け皿」、下顎が「カナヅチ」です。
叩く側のカナヅチはなかなか壊れませんが、力を受ける側には負担がかかります。インプラント治療でも同じように、特に上顎では、インプラントの本数や配置、骨質、噛み合わせなどを慎重に考えて設計する必要があります。
4本で支えるよりも6本で支える方が、噛む力を分散できるだけでなく、骨質の悪い場所を避け、より条件の良い位置にインプラントを配置する選択肢も増えます。
そのため当院では、特に上顎や骨の条件が悪い方、噛む力が強い方など、リスクが高いと判断した場合には、4本にこだわらず6本以上にインプラントの本数を増やすことも大切だと考えています。
インプラントの本数が多ければ、1本だめになったとき残りで支えられる
オールオン4に限らず、歯科治療では、将来何かトラブルが起こった場合まで想定して治療計画を立てることが非常に重要だと考えています。
歯科治療に限らず、世の中に「絶対」はありません。
では、オールオン4を支えている4本のインプラントのうち、1本がだめになったらどうなるでしょうか?
残るインプラントは3本です。基本的には3本のインプラントで12本の歯を長期的に支えることは難しいため、それまで使用していた固定式の上部構造が使えなくなり、一時的に入れ歯での生活を余儀なくされることもあります。
さらに、オールオン4の上部構造は12本の歯がつながった1ピースの一体型で作られていることが多いため、失った場所にインプラントを再埋入したとしても、元の上部構造は使用できなくなります。
新しいインプラントの位置に合わせて、上部構造を一から作り直すなど、治療が大掛かりになりやすいのです。
一方、6本のインプラントで治療していれば、1本を失っても5本残ります。インプラントの位置や噛み合わせなどの条件が許せば、残った5本で上部構造を支えながら、失ったインプラントの再治療を行える可能性があります。
さらに、6本や7本と十分な本数のインプラントを入れられる場合には、上部構造をすべてつなげた1ピースではなく、3ピースや4ピースにブロックごとに分けて製作することも可能です。
この設計であれば、1本のインプラントにトラブルが起きても、すべての上部構造をやり直すのではなく、トラブルが起きた部分を含むブロックだけをやり直すことでリカバリーできるようになります。
インプラントの本数を増やすことは、単に噛む力を分散させるためだけではありません。
「もし将来1本を失ったとしても、できるだけ小さな治療でリカバリーできるようにしておく」ことも、インプラントの本数に余裕を持たせる大きな理由なのです。
本数を増やす提案が、費用の壁で受け入れられにくい現実
インプラントの本数が多い方が安心なのであれば、最初から6本や7本入れればいいのでは?と思われるかもしれません。
しかし、実際の治療ではそう簡単にはいきません。
インプラントの本数を増やせば、それだけ治療費用も高くなります。
私たち歯科医師が「できれば6本で支えたい」と考えてご提案しても、費用が数十万円、場合によってはそれ以上高くなれば、患者様が4本での治療を希望されることも少なくありません。
歯科医院側も、医学的な理想だけで治療を提案することが難しくなってしまいます。
患者様の予算や希望も考えながら、現実的に受けられる治療を一緒に考える必要があります。
その結果、「できるだけ少ない本数で固定式の歯を支えられる4本」というオールオン4の設計は、治療費と治療の成立性とのバランスを取りやすいという側面があります。
だからこそ大切なのは、最初から「4本ありき」で考えるのではなく、本来その患者様には何本必要なのかを診断したうえで、費用も含めて治療方法を選択することだと考えています。
「インプラント4本で足りるかどうか」は、診てみないとわかりません
歯科医師はどのようなことを考慮して、インプラントの本数を決めるのでしょうか。
まず大前提として、オールオン4では、後方のインプラントを「傾斜埋入」といって、上顎洞や下顎の神経などを避けながら斜めに入れることに特徴があります。
そして重要なのが、一番後ろのインプラントから、さらに後方へどこまで歯を延ばすのかという点です。
オールオン4の原則では、後方のインプラントより後ろに延ばす人工歯は、原則として1本程度までとなっています。

時々、後方のインプラントよりさらに2本分の歯を延ばした上部構造を見ることがあります。しかし、後ろに長く延ばすほど「テコの原理」が働き、インプラントに大きな負担がかかり、トラブルの原因となります。
上顎洞や神経の位置、そして骨のボリュームは患者様によってまったく異なります。
そのため、骨の条件によって後方のインプラントを十分後ろに配置できず、4本で治療すると後方に2本分の人工歯を延ばさなければならないような場合には、そもそも4本という設計に無理がある可能性があります。
このような場合には、インプラントの本数を増やし、より後方にもインプラントを配置するなど、別の設計を検討する必要があります。
また、インプラントの本数を決めるうえでは、年齢や性別、骨の量や質だけでなく、噛む力や歯ぎしり・食いしばり、普段好んで食べる物なども考慮します。
特に、噛む力は決して軽視できません。
噛む力が強い方は、時に300kgの力がインプラントや上部構造に負担としてかかります。
そのような方では、インプラントの本数を増やして1本あたりにかかる力を分散させるなど、より余裕を持った設計が重要になります。
つまり、必要なインプラントの本数は、治療を始める前から「4本」と決まっているものではありません。
CTで骨や神経、上顎洞の位置を確認し、さらに噛む力や噛み合わせまで診査して、初めて「4本で十分なのか、それとも6本必要なのか」が判断できるのです。
オールオン4で実際に多い「こんなはずではなかった」の後悔

オールオン4は、固定式の歯でしっかり噛めるようになる一方で、実際に治療を受けてから「こんなはずではなかった」と後悔される方もいらっしゃいます。
特に多いのが、噛み合わせの違和感や清掃のしにくさ、見た目の問題、そしてインプラントや上部構造にトラブルが起きたときの修理の大変さです。
これらの中には、治療前にはなかなか想像しにくく、実際に使い始めてから初めて気づく問題もあります。
ここからは、オールオン4の治療後に起こり得る代表的なトラブルについて、順番にご説明します。
噛み合わせに違和感が残る・思ったように噛めない
「固定式の歯になれば、自分の歯のように何でも噛めるようになる」と期待して、オールオン4を選ばれる方は多いと思います。
しかし実際には、治療後に
「片側だけ強く当たる」
「噛む位置がしっくりこない」
「思っていたほど噛めない」
といった違和感を感じる方もいらっしゃいます。
本来、インプラント治療はトップダウントリートメントで行うことが非常に重要です。
これは、「骨がある場所を探してインプラントを入れ、後からその位置に合わせて歯を作る」のではなく、最終的に歯をどこに並べ、どの位置で噛ませるのかを先に決め(トップ)、そこから逆算してインプラントの位置を設計(ダウン)するという考え方です。
一方、オールオン4は、上顎洞や神経を避けながら、残っている骨を最大限利用するために後方のインプラントを斜めに埋入することに特徴があります。そのため、骨の条件が厳しい症例ほど、理想的な歯の位置とインプラントを入れられる位置との間にズレが生じないよう、慎重な設計が必要になります。
さらに、もう一つ重要なのが「顎位(がくい)」、つまり上下の顎がどの位置で噛み合うのかです。
オールオン4では、抜歯と同時にインプラントを入れ、その日のうち、あるいは短期間で固定式の仮歯を装着する「即時荷重」が行われることがあります。
実際、即時にプロビジョナルを装着することはAll-on-4の代表的なプロトコルの一つです。
しかし、多くの歯を失っている方や、長年噛み合わせが崩れていた方では、「本来どこで噛むのがその方にとって自然なのか」を一度の診査だけで決めることが難しい場合があります。
本来であれば、プロビジョナルデンチャー(仮義歯)などを使いながら、実際に食事や会話をしていただき、顎位や歯の位置、噛み合わせ、高さなどを確認し、必要であれば修正していくため、期間が本来必要になります。
仮歯は、単に最終的な歯が入るまでの「仮の歯」ではありません。
「この位置なら無理なく噛めるのか」「顎が疲れないか」「左右均等に噛めているか」を実際の生活の中で確認する、大切な診断材料でもあります。
だからこそ、治療期間の短さだけを優先するのではなく、最終的な歯の位置から逆算したインプラントの配置と、十分に確認された顎位、この2つを両立させることが、治療後にしっかり噛めるオールオン4には重要なのです。
上手く磨けず、インプラント周囲炎やにおいにつながる
オールオン4の大きな難点の一つが、歯磨きのしにくさです。
インプラントは虫歯にはなりませんが、天然歯の歯周病に似た「インプラント周囲炎」になることがあります。
インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支えている周囲の骨が徐々に吸収し、最終的にはインプラントがグラグラになり、抜け落ちてしまうこともあります。
また、オールオン4を受けられる患者様の中には、もともと重度の歯周病などによって多くの歯を失った方がほとんどなので、一般的な方より、歯周病のリスクは高いといえます。
そのような方は、治療後のインプラント周囲炎に十分注意する必要があります。
だからこそオールオン4では、いかにきれいにブラッシングを行い、定期的なメインテナンスを続けられるかが、インプラントを長持ちさせるうえで非常に重要になります。
しかし、オールオン4の上部構造は固定式のため、ご自身で取り外して洗うことができません。
さらに、本当に磨かなければならない「インプラントと上部構造の境目」は、天然歯の歯ぐきとの境目よりも深く、見えにくい位置にあります。

添付写真の緑色で囲んだ部分が、実際に清掃しなければならないインプラント周囲です。唇や頬を指などで大きく排除しなければ、歯ブラシがきちんと当たっているか確認することも難しい場所になります。
また、インプラント同士の間にも汚れが溜まるため、歯ブラシだけではなく、フロスや歯間ブラシなど複数の補助清掃用具を使って清掃する必要があります。
そして、ここでも重要になるのが上部構造の形態設計です。
見た目だけを優先して歯ぐきとの隙間を狭くしすぎれば、歯ブラシやフロスが入らず、毎日の清掃が非常に難しくなります。
反対に、インプラント周囲まで清掃器具が届くように設計されていれば、同じ固定式の上部構造でも清掃のしやすさは大きく変わります。
つまりオールオン4は、「きれいな歯を作る」だけではなく、「患者様が毎日きちんと磨ける形に作る」ことまで考えて設計する必要があります。
清掃性の悪い上部構造は、汚れが溜まりやすく、インプラント周囲炎だけでなく、口臭の原因にもなるため、細心の注意が必要です。
治療後の口元の見た目の印象が、想像と違った
治療後の口元の見た目は、ただ歯が綺麗に並んでいるだけでは、審美的とはいえません。
歯の形や色だけでなく、口元の膨らみや張り、そして笑ったときに白い歯がどのくらい見えるのかも非常に重要です。
口元が膨らみすぎると出っ歯のような印象になりますし、反対に引っ込みすぎると、口元に張りがなくなり老けた印象になることがあります。
また、笑ったときに歯が適度に見えると若々しく自然な印象になりますが、歯がほとんど見えなければ、歯が無いような口元の印象になってしまうため審美的な口元にはなりません。
そのため最終的な上部構造は、歯の位置だけでなく、唇との関係まで考えて3次元的にミリ単位で調整する必要があります。

そして、ここで知っていただきたいのが、オールオン4は総入れ歯と比べて、口元の膨らみや張りを作ることが難しいということです。

写真のように、総入れ歯では口唇の深い位置まで入れ歯の床を延ばすことができるため、その厚みを利用して唇を内側から支え、口元の張りや膨らみを調整することができます。
一方、オールオン4では、基本的にインプラントから固定式の上部構造が立ち上がります。そのため総入れ歯のように、口唇の深い位置まで装置を延ばして唇を支えることができません。
特に、長期間歯を失っていたことで顎の骨が大きく痩せている方では、歯を綺麗に並べることはできても、失われた骨や歯ぐきのボリュームまで固定式の上部構造だけで自然に再現することが難しい場合があります。
だからこそオールオン4では、最終的な歯を作ってから「思っていた口元と違った」とならないように、治療前や仮歯の段階で、歯の見え方だけでなく、横顔や唇の張りまで確認しておくことが非常に重要です。
模型やシミュレーション、仮歯などを使いながら、歯の長さや位置、口元の膨らみを実際に確認し、患者様と仕上がりのイメージを共有してから最終的な上部構造を製作することが大切です。
わずかな破損やインプラント1本の脱落でも、大きな作り直しになる
オールオン4で注意しなければならないのは、インプラントそのもののトラブルだけではありません。
長年使用していると、人工歯が欠けたり、上部構造が破損したり、固定しているネジが緩んだりすることがあります。
天然歯であれば、1本の歯が欠けたり被せ物が壊れたりしても、基本的にはその歯だけを治療すれば済みます。
しかし、オールオン4では12本程度の人工歯が一つにつながった「1ピース」の上部構造が使用されることが多いため、一部分の小さなトラブルであっても、その部分だけを簡単に取り外して交換することができません。
人工歯がわずかに欠けただけであれば修理で対応できる場合もありますが、破損の場所や程度によっては上部構造全体を外して修理したり、場合によっては作り直したりする必要があります。
また、先ほどご説明したように、4本のうち1本のインプラントそのものを失った場合には、さらに問題は大きくなります。残った3本だけで固定式の上部構造を支えることは難しく、新しいインプラントの埋入や上部構造の再製作など、大掛かりな再治療が必要になることがあります。
つまりオールオン4では、「小さなトラブルが、治療全体に影響しやすい」ということを、治療前に知っておく必要があります。
治療費を考える際にも、最初にかかる費用だけではなく、将来修理や作り直しが必要になった場合の費用、そしてその間に仮歯や入れ歯が必要になる可能性まで含めて考えておくことが大切です。
オールオン4が「できない」と言われる人・向いていない人

オールオン4は、すべての患者様に適している治療ではありません。
骨の量や質など、身体的な条件によって「オールオン4での治療が難しい方」もいれば、治療自体はできても、長期的なリスクを考えると「オールオン4を選択しない方がよい」と判断する方もいらっしゃいます。
特に重要になるのが、骨の状態、噛む力、残っている歯の状態、そして治療後のメインテナンスが継続できるかという点です。
「インプラントを4本入れられる=オールオン4に向いている」というわけではありません。
ここからは、当院がオールオン4を検討する際に、特に慎重に判断しているケースについてご説明します。
骨の量や質が足りない場合
オールオン4は、後方のインプラントを斜めに入れる「傾斜埋入」によって、上顎洞や下歯槽神経を避け、負担の大きな骨造成を行わずに治療できることが大きなメリットです。
しかし、もともとの骨の量や質が十分でなければ、オールオン4での治療が難しい場合があります。
また、オールオン4では、一番後ろのインプラントよりさらに後方へ延ばす人工歯は、原則として1本程度までとされています。
上顎洞が大きく広がっている方や、下顎の神経の位置によって後方のインプラントを十分後ろに配置できず、2本分の人工歯を後方へ延ばさなければならない場合には、無理に4本で支えるのではなく、インプラントの本数を増やしたオールオン6などを検討する必要があります。
特に上顎は、解剖学的な構造からインプラント治療に制限を受けやすい部位です。
上顎には鼻腔と左右の上顎洞という大きな空洞があり、これらを避けながらオールオン4のインプラントを配置しなければなりません。また、上顎の骨は下顎と比較して柔らかく、骨密度が低い傾向があるため、インプラントの十分な初期固定を得にくい傾向にあります。
そのため当院では、治療前にCTで骨の高さや厚み、骨質、上顎洞や神経の位置を確認し、「4本のインプラントを入れられるか」だけではなく、「4本で無理のない上部構造を設計できるか」まで考えて判断します。
条件が悪いにもかかわらず、無理に4本だけで治療する必要はありません。
必要であれば上顎洞に骨を増やす処置などを行い、インプラントをより適切な位置に配置できる環境を整えたうえで、本数を6本などに増やし、無理のない上部構造を設計することが重要です。
噛む力が強い方・食いしばりや歯ぎしりのある方
噛む力が強い方や、歯ぎしり・食いしばりのある方は、より慎重にオールオン4の治療を検討する必要があります。
オールオン4は、必要最小限の4本のインプラントで片顎すべての人工歯を支える治療方法です。
そのため、噛む力が非常に強い方では、上部構造の破損やネジの緩み、さらにはインプラントそのものがダメになってしまうこともあります。
噛む力によって起こるトラブルは、患者様によって歯ぎしりや食いしばりの強さ、頻度、噛み方などが異なりデータを取ることが難しいため、論文などの科学的根拠として示されることはほとんどありませんでした。
しかし、多数歯欠損や無歯顎(全く歯が無い方)のインプラント治療を数多く行っている歯科医師であれば、「噛む力」が治療結果に大きく影響することは、日々の臨床で実感するところだと思います。
そして、オールオン4で特に注意しなければならないのが、一番後ろのインプラントより、さらに後方へ人工歯を延ばす「カンチレバー」と呼ばれる構造です。
一番後ろの人工歯の真下にはインプラントの支えがありません。
そのため、そこに強い力が加わると「テコの原理」が働き、支点となるインプラントには、より大きな負担がかかります。
もともと人間は前歯より奥歯の方が強い力で噛みます。
そこに歯ぎしりや食いしばりが加われば、最後方の人工歯にはさらに大きな力が繰り返しかかることになります。
そのため、噛む力が強い方ほど、オールオン4では力に対する十分なリスク管理が必要です。
上部構造の一部が破損するだけであれば、修理で対応できる場合もあります。
しかし、その負担がインプラントの喪失にまでつながれば、インプラントの再埋入や上部構造の再製作が必要となり、身体的にも金銭的にも大きな負担となります。
だからこそ当院では、噛む力が強い方に対して、最初から「4本」と決めて治療するのではなく、インプラントを6本などに増やして力を分散させる、カンチレバーをできるだけ短くする、上部構造の素材や設計を工夫するなど、その方の噛む力に合わせて治療計画を考えることが重要だと考えています。
また、歯ぎしりや食いしばりが強い方では、治療後にナイトガードを使用していただき、就寝中にインプラントや上部構造へ加わる負担をできるだけ軽減することも大切です。
「インプラントが4本入るか」だけではなく、「その4本で、その患者様の噛む力を長期間支えられるのか」まで考えることが重要なのです。
まだ残せる歯がある方や、残った歯を活かしたい方
オールオン4は、基本的にすべての歯を失った方、もしくは残っている歯をすべて抜歯する必要がある方に行う治療です。
そのため、まだ健康な歯や治療によって十分残せる歯があったとしても、オールオン4を行うためには、それらの歯を抜かなければなりません。
もちろん、重度の歯周病や虫歯などで、残しておくことがかえって将来のリスクになる歯であれば、抜歯してオールオン4にすることが適している場合もあります。
しかし、「治療を簡単にするために、まだ使える天然歯まで抜いてしまう」ことには、私自身は慎重に考えるべきだと思っています。
天然歯は、一度抜いてしまえば二度と元には戻りません。
数本でも長く使える歯が残っているのであれば、その歯を活かしながらインプラントや入れ歯を組み合わせるなど、オールオン4以外の治療方法も検討する価値があります。
「オールオン4ができるか」ではなく、「本当に残っている歯をすべて抜いてまでオールオン4にする必要があるのか」など、抜歯を決める前に、もう一度考えていただきたいポイントです。
通院とセルフケアを続けることが難しい場合
オールオン4は「治療が終われば、それで終わり」という治療ではありません。長く使用するためには、ご自身での毎日のブラッシングに加えて、歯科医院での定期的なメインテナンスが必要です。
当院では基本的に2〜3ヶ月に一度ご来院いただき、インプラント周囲の清掃状態やネジの緩み、上部構造の破損、噛み合わせなどを確認します。また必要に応じて上部構造を取り外し、普段の歯磨きでは届かない部分までクリーニングを行います。
こうした定期的な管理ができなければ、インプラント周囲炎や上部構造のトラブルに気づくのが遅れ、結果としてインプラントの寿命に影響することがあります。
そのため、遠方にお住まいの方や、お仕事などで定期的な通院が難しい方、将来的にご自身で十分な清掃を続けることが難しいと考えられる方では、ご自身やご家族が取り外して清掃できる治療方法も含めて検討することが大切です。
10年後、そして介護が必要になったときの問題

オールオン4を検討する際には、治療直後の噛みやすさや見た目だけでなく、10年後、20年後の生活まで考えて治療方法を選ぶことが大切です。
今は問題なく歯磨きや通院ができていても、年齢を重ねれば、手先が動かしにくくなったり、ご自身だけでは十分な清掃ができなくなったりすることもあります。
インプラントは、一度入れたら終わりではなく、その後も長く付き合っていく治療です。
だからこそ、「今、快適に使えるか」だけではなく、「将来、自分で管理できなくなったときにも困らないか」という視点まで持って、治療方法を選ぶことが重要です。
外して洗えるかどうかが、老後に大きく影響します
上部構造をご自身で外して洗えるかどうかは、老後のお口の管理に大きく影響します。
オールオン4などの固定式インプラントを装着した状態で、将来介護が必要になったり、寝たきりになったりした場合、お口の管理をしてくれるのは、ご家族や看護師さん、介護士さんになります。
しかし、オールオン4は固定式でご自身では取り外すことができず、上部構造の下やインプラント周囲を清掃するためには、歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシなど複数の清掃器具を使い分ける必要があります。
ご自身でも決して簡単ではない清掃を、寝たきりの患者様に対して、ご家族や看護師さん、介護士さんが毎日十分に行うことは非常に困難を極めます。
私自身、一時期、高齢者施設や寝たきりの方が入院されている病院へ訪問歯科診療に伺っていました。
そこで実際に何度も目にしたのが、固定式のインプラント治療を受けた後、ご自身でお口の管理ができなくなった患者様です。
上部構造の下には長期間の汚れが溜まり、ドロドロの状態になっていたり、ひどい口臭がしたりと、インプラントにとって非常に悲惨な状態になっている方もいらっしゃいました。
しかも、オールオン4の上部構造はネジなどで固定されているため、入れ歯のようにご家族や介護をされる方が簡単に取り外して洗うことはできません。
歯科医院のように器具や設備の整った環境でなければ、訪問診療で歯科医師が伺ったとしても、容易に上部構造を取り外すことはできません。
一方、取り外し式の装置であれば、ご本人が磨けなくなったとしても、ご家族や介護をされる方が装置を外し、お口の中と装置をそれぞれ清掃することができます。
これは、若く健康なときにはあまり気にならない違いですが、介護が必要になった瞬間に非常に大きな違いになります。
お口の中に汚れが溜まった状態が続けば、インプラント周囲炎のリスクが高くなるだけでなく、口腔内細菌を誤嚥することによる誤嚥性肺炎のリスクも上がり、より重篤な症状を引き起こすこともあるため注意が必要です。
だからこそ、オールオン4を検討するときには、今の快適さだけではなく、10年後、20年後まで考えて、「固定式にするのか、それとも自分で外して洗える可撤式にするのか」を慎重に検討することが大切だと考えています。
上顎と下顎では、条件がまったく違います
インプラント治療を考えるうえで、上顎と下顎を同じ条件で考えることはできません。
これまでにもお話ししたように、一般的に下顎の骨は硬く、インプラントの固定を得やすいのに対して、上顎の骨は柔らかく、スポンジ状の構造をしています。
さらに上顎には、鼻腔と左右の上顎洞という大きな空洞があります。そのため、インプラントを入れられる骨の量や位置にも制限があり、下顎よりも治療条件が厳しくなる傾向があります。
また、噛む力のかかり方にも違いがあります。
人間は、頭蓋骨に固定された上顎に対して、下顎が上下に動くことで食べ物を噛みます。
イメージとしては、上顎が「受け皿」、下顎が「カナヅチ」です。
叩く側のカナヅチよりも、力を受け止める側に負担が蓄積しやすいように、上顎は噛む力を受け止める側となります。
つまり上顎は、「骨が柔らかい」「上顎洞や鼻腔によってインプラントを入れられる場所が限られる」「噛む力を受け止める側になる」という複数の条件が重なります。
そのため、無歯顎のインプラント治療では、下顎よりも上顎の方がインプラントの本数を多くして、余裕を持った設計にすることがあります。下顎では4本で十分と判断できても、上顎では6本以上で支えた方がよいと判断することも珍しくありません。
だからこそ、上下とも歯がないからといって、必ず上下とも同じオールオン4にする必要はありません。
例えば、上顎は取り外して清掃でき、失われた口元の膨らみも補いやすい総入れ歯にして、骨が硬く条件の良い下顎だけをオールオン4などの固定式にすることも、良い治療方法です。
反対に、患者様の骨の状態や噛む力、年齢、清掃のしやすさなどによっては、上下とも取り外しのできる治療方法を選択した方がよい場合もあります。
「上下とも歯がないから、上下とも同じ治療」ではなく、上顎と下顎それぞれの条件を診断し、10年後、20年後の管理まで考えて治療方法を決めることが大切です。
治療費用だけでなく、先々の維持費まで含めた総額について
オールオン4の費用を比較するときに、最初に提示された治療費だけで判断することはおすすめできません。
オールオン4は、一度治療が終われば、その後一切費用がかからない治療ではないからです。
例えば、オールオン4の上部構造をレジン(プラスチック)で製作することで、最初の治療費を抑えている歯科医院もあります。
もちろん、レジンにも修理しやすいなどのメリットがあります。しかし、セラミックなどと比べて摩耗や破損が起こりやすく、長期間使用していると人工歯がすり減ったり、欠けたり、割れたりすることがあります。
最初は安く治療できたとしても、その後何度も修理や交換が必要になれば、そのたびに費用がかかります。修理内容によっては数万円から数十万円、上部構造全体の作り直しとなれば、さらに大きな費用が必要になることもあります。
また、これはレジンに限った話ではありません。
オールオン4の上部構造は、人の手で作られたものを毎日食事に使用し、長期間にわたって強い噛む力を受け続けます。どれだけ精密に作られた上部構造であっても、人工歯の破損や摩耗、ネジの緩み、噛み合わせの変化など、将来的に何らかのメインテナンスや修理が必要になる可能性があります。
さらに、オールオン4は12本程度の人工歯がつながった大きな上部構造です。
一般的な入れ歯であれば、人工歯が欠けたり入れ歯が割れたりしても比較的小さな修理で対応できることがありますが、オールオン4ではトラブルの内容によって上部構造全体を外して修理したり、場合によっては作り直したりするため、修理費用が高額になることがあります。
だからこそ治療費を比較するときには、「最初にいくらかかるのか」だけではなく、「この治療を10年、20年使っていくために、どのような維持費がかかる可能性があるのか」まで確認することが重要です。
極端に安い金額でオールオン4を提示された場合には、上部構造に使用される素材、保証期間、定期的なメインテナンス費用、破損した場合の修理費用、上部構造を作り直す場合の費用まで確認しておくことをおすすめします。
高額な治療だからこそ、金額だけで決めるのではなく、疑問が残る場合には他院でセカンドオピニオンを受け、治療内容と将来必要になる費用まで比較したうえで判断することが大切です。
>>オールオン4の上下の費用相場についてさらに詳しくはこちら
オールオン4の前に知って欲しい「インプラントオーバーデンチャー」という選択
ここまでオールオン4のさまざまなデメリットについてお話ししてきましたが、多くの歯を失ったからといって、選択肢はオールオン4だけではありません。
当院で多く行っている治療の一つに、「インプラントオーバーデンチャー」という方法があります。
インプラントでしっかりと入れ歯を固定しながら、必要なときにはご自身で取り外して洗うことができる治療方法です。
オールオン4と比べて少ないインプラント本数で治療できるため費用を抑えやすく、毎日の清掃もしやすくなります。
さらに、将来ご自身で歯磨きができなくなったとしても、ご家族や介護をされる方が取り外して清掃することができる特徴があります。
つまり、これまでお話ししてきた「費用」「清掃のしにくさ」「老後の管理」というオールオン4の問題点を解決できるのが、インプラントオーバーデンチャーです。
「入れ歯は動く、噛めない」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、通常の総入れ歯とは構造が大きく異なります。
ここからは、オールオン4との違いも含めて、インプラントオーバーデンチャーがどのような治療なのかをご説明します。
少ないインプラントの本数で支え、取り外して洗える仕組み
インプラントオーバーデンチャーは、上顎4本、下顎2本のインプラントで、総入れ歯をボタンのようなもので固定する治療法になります。

通常の総入れ歯は、入れ歯と歯ぐきの間から空気が漏れないようにすることで、吸盤のような効果を利用して安定させます。
そのため、大きな物を前歯で噛んだときなどに、入れ歯が浮いたり外れたりすることがあります。
一方、インプラントオーバーデンチャーは、インプラントと入れ歯をアタッチメントと呼ばれる装置で「パチッ」と固定します。
そのため、通常の総入れ歯よりも、安定した状態で食事をすることができます。
また、オールオン4が4本のインプラントで固定式の上部構造を支えるのに対して、インプラントオーバーデンチャーは、インプラントだけですべてを支えるのではなく、歯ぐきや顎の骨にも入れ歯を支えてもらう構造になっています。
そのため、オールオン4よりも少ない本数のインプラントで治療することが可能になります。

さらに上顎では、通常の総入れ歯のように上顎全体を入れ歯で覆う必要がなく、写真のように上顎部分を大きくくり抜いた形にすることができます。
上顎を覆う部分を少なくできるため、違和感や異物感を軽減できることも大きな特徴です。
そして、インプラントオーバーデンチャーの最大の特徴が、しっかり固定されているのに、ご自身で取り外して洗えることです。
入れ歯はご自身で取り外し、お口の外で隅々まで洗うことができます。
また、お口の中に残るインプラントのアタッチメントも直径4mm程度の小さなパーツなので、歯ブラシを直接当てやすく、固定式のオールオン4と比べても非常に清掃しやすい構造です。
もし将来、介護が必要になり、ご自身で十分な歯磨きができなくなったとしても、ご家族や介護をされる方が入れ歯を外し、お口の中と入れ歯をそれぞれ清掃することができます。
「しっかり固定して噛めること」と「自分で外してきれいに洗えること」。この2つを両立できることが、インプラントオーバーデンチャーの大きなメリットです。
オールオン4よりも費用を抑えやすい理由と、上部構造の支え方
インプラントオーバーデンチャーがオールオン4よりも費用を抑えやすい理由は、大きく2つあります。
1つ目は、使用するインプラントの本数が少ないことです。

オールオン4では片顎4本のインプラントが必要になりますが、インプラントオーバーデンチャーでは、当院の場合、基本的に上顎4本、下顎2本程度のインプラントで治療を行います。
特に下顎ではインプラントの本数を大きく減らせるため、その分治療費用を抑えることができます。
2つ目は、上部構造の材質と作り方の違いです。

オールオン4では、固定式の上部構造にセラミックなどの材料を使用する場合があり、12本程度の人工歯を一体型で製作するため、上部構造そのものが高額になります。
一方、インプラントオーバーデンチャーは、強度を確保するために内部に金属フレームなどを使用しますが、基本的には入れ歯の材質のレジンと言われる樹脂を用いるため、セラミックとはかかるコストが異なります。
そのため、インプラントオーバーデンチャーはオールオン4の固定式上部構造と比べて製作費用を抑えやすくなります。
つまり、「インプラントの本数」と「上部構造」の両方で費用を抑えられることが、インプラントオーバーデンチャーの大きな特徴です。
また、入れ歯とインプラントを固定する装置を「アタッチメント」と呼びます。
当院では主に、ロケーターアタッチメントと磁性アタッチメントの2種類を、患者様の状態によって使い分けています。
ロケーターアタッチメントは、インプラントと入れ歯をしっかりと連結できるため、強い維持力を得られることが特徴です。
「入れ歯が動くのが嫌」という方には非常に有効な方法です。
一方で、噛む力が非常に強い方や歯ぎしり・食いしばりのある方では、その強い連結によってインプラント側に大きな負担が伝わることがあります。
そのような場合に当院で選択しているのが、磁性アタッチメントです。
磁性アタッチメントは磁力を利用して入れ歯を固定するため、ロケーターのように機械的に強く把持する構造とは異なります。
横方向から過度な力が加わった際には、入れ歯がわずかにスライドすることで力を逃がし、インプラントに過剰な負担が集中しにくいという特徴があります。
つまり、「強く固定できれば、それで良い」というわけではありません。
噛む力や歯ぎしり・食いしばりの有無、骨の状態、インプラントの本数や配置などを確認し、患者様ごとに適したアタッチメントを選択することが、インプラントを長く使用するためにも重要だと当院では考えています。
オールオン4とオーバーデンチャー、判断の分かれ目
オールオン4とインプラントオーバーデンチャーには、それぞれにメリット・デメリットがあるため、すべての患者様に同じ治療方法が適しているわけではありません。
オールオン4の大きなメリットは、固定式であることです。
ご自身で取り外す必要がなく、インプラントでしっかりと固定されているため安定して噛むことができます。また、取り外し式の入れ歯と比較すると上部構造を小さくできるため、お口の中の違和感を少なくできることもメリットです。
そして患者様によっては、「取り外し式であること」そのものに強い抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
比較的お若い方や、入れ歯に対して抵抗のある方の中には、「家族にさえ入れ歯を外しているところを見られたくない」とお話しされた方もいらっしゃいました。
このように、「どうしても取り外し式の入れ歯は嫌だ」という方にとっては、固定式のオールオン4は非常に大きなメリットのある治療方法だと思います。
一方、インプラントオーバーデンチャーも、通常の総入れ歯とは大きく異なります。
インプラントによって入れ歯をしっかり固定するため、安定した状態で食事をすることができ、上顎では口蓋部分を大きくくり抜くことで、違和感を少なくすることもできます。
そして何より大きな違いが、必要なときにはご自身で取り外して、隅々まできれいに洗えることです。
今はオールオン4をご自身できれいに磨くことができても、10年後、20年後も同じように清掃できるとは限りません。将来介護が必要になったとしても、インプラントオーバーデンチャーであれば、ご家族や介護をされる方が装置を取り外し、お口の中と入れ歯をそれぞれ清掃することができます。
さらに、必要なインプラントの本数を少なくできるため、費用を抑えやすく、インプラントや上部構造にトラブルが起きた際にも、固定式のオールオン4と比べて修理やリカバリーを行いやすいこともメリットです。
そのため当院では、噛む力や骨の状態、年齢、通院できる頻度、清掃のしやすさ、そして10年後、20年後の生活まで考えて、どちらがその患者様に適しているのかを判断しています。
「絶対に取り外し式の入れ歯にはしたくない」という方には、オールオン4が適している場合があります。
しかし、取り外し式であることに強い抵抗がないのであれば、しっかり噛めることに加えて、清掃性、費用、修理のしやすさ、そして将来介護が必要になったときの管理まで考えると、インプラントオーバーデンチャーには非常に多くのメリットがあると私は考えています。
インプラントの本数と設計で結果が変わるからこそ、当院が行っていること

ここまでお話ししてきたように、インプラント治療は、単に「何本インプラントを入れるか」だけで結果が決まるわけではありません。
どこにインプラントを入れ、どの位置に人工歯を作り、治療後に患者様ご自身できちんと清掃できるのか。
そこまで考えて初めて、長く使いやすいインプラント治療につながると当院では考えています。
そのため当院では、最終的な歯の位置から逆算する「トップダウントリートメント」を基本に、インプラントの本数・埋入位置・上部構造の形態・清掃性までを一つの治療として考え、設計しています。
CTとシミュレーションで、インプラントの本数と埋入位置を正確に設計する
当院では、まず仮歯を用いて噛み合わせや歯の大きさ、位置関係などを煮詰め、最終的に歯を並べたい理想的な位置を決定します。
そして、その歯の位置から逆算してインプラントのポジションを決定する「トップダウントリートメント」を基本にしています。
大切なのは、単に「骨がある場所にインプラントを入れる」のではありません。
CTで骨の高さや厚み、骨質、上顎洞や神経などの位置を確認し、そこに仮歯で決定した理想的な歯の位置を重ね合わせます。
そのうえで、どの位置に、どの角度で、何本のインプラントを入れれば、最終的な歯を無理なく支えられるのかをシミュレーションします。
そして、シミュレーションしたインプラントの位置を実際の手術でも正確に再現するために、当院では必ず「インプラントガイド」と呼ばれる装置を作製して手術を行います。

インプラントガイドには、CTから得られた骨の情報と、仮歯から得られた理想的な歯の位置の両方が反映されているため、事前にシミュレーションしたインプラントの位置や角度を、実際のお口の中で、正確に再現することができます。
「インプラントを入れてから歯の位置を決める」のではなく、「理想的な歯の位置を決めてから、インプラントを入れる位置を決める」。
この順番が、噛みやすく、見た目が自然で、さらに長く使用できるインプラント治療を行ううえで非常に重要だと考えています。
清掃しやすさから逆算した上部構造の設計
最終的な理想的な歯の真下にインプラントを配置することで、より安定したインプラント治療ができるとともに、ブラッシングがしやすい、汚れの溜まりにくい上部構造を作成することができます。

反対に、インプラントの位置が少し奥まったり、外側に飛び出したポジションになるだけでも、上部構造の形に凹凸ができ、部分的に歯ブラシが届きにくくなります。
また、オールオン4の症例では、歯ぐきの土手に覆い被さるような形状の上部構造が入っているケースを拝見することがあります。
このような形態では、上部構造と歯ぐきの間に歯ブラシの毛先が届かず、フロスや歯間ブラシも通らない場所ができてしまいます。
当然、その部分には汚れが溜まり続けます。
つまり、患者様がどれだけ一生懸命歯磨きをしても、ご自身では綺麗にできない構造になっているということです。
上部構造を外さなければ清掃できないような設計では、インプラント周囲炎になる可能性を高めてしまいます。
だからこそ当院では、見た目だけではなく、「患者様ご自身が毎日きちんと磨ける形」を重視して上部構造を設計しています。

具体的には、すべての部位に歯間ブラシが通り、歯ブラシを特別な角度から無理に差し込まなくても、通常のストロークで毛先がインプラント周囲まで満遍なく当たる形態に作成します。
そのためにも重要になるのが、前の章でお話ししたトップダウントリートメントです。
理想的な歯の位置から逆算して、その真下の適切な位置にインプラントを配置できれば、無理に上部構造を張り出させたり、複雑な形にしたりする必要がありません。
「きれいな歯を作る」だけではなく、「患者様が毎日きれいにできる歯を作る」。
これが、インプラントを長く使用していただくために、当院が上部構造の設計で特に大切にしていることです。
手術への不安の解消と、他院で治療を受けた方のご相談
インプラント治療を検討されている方の中には、「手術が怖い」「長時間の治療に耐えられるか心配」という方も多くいらっしゃいます。
当院では、ご希望に応じて静脈内鎮静法を併用し、眠っているようなリラックスした状態で手術を受けていただくことも可能です。
また、手術中は生体モニタで血圧や脈拍、血中酸素飽和度などを確認しながら、全身状態にも配慮して治療を行っています。
「他院でオールオン4を勧められたけれど、本当に自分に合っているのかわからない」という段階でのご相談も可能です。
すでにオールオン4を受けられ、噛み合わせや清掃性、見た目などにお悩みの方からのご相談にも対応しております。
治療を受けるかどうかを決める前でも構いませんので、不安や疑問がある段階で一度ご相談ください。
まとめ:オールオン4の失敗は「本数と設計」を確認することで避けられます

オールオン4は、決して悪い治療ではありません。
固定式でしっかり噛めることや、違和感を少なくできることなど、大きなメリットがあります。
ただし、すべての患者様に「4本」という同じ本数が適しているわけではありません。
骨の量や質、噛む力、インプラントの配置、上部構造の設計、清掃性まで含めて、その方に合った治療計画を立てることが重要です。
また、費用や清掃性、将来介護が必要になったときの管理まで考えると、インプラントオーバーデンチャーの方が適している方も多くいらっしゃいます。
どちらの治療が合っているかは、実際にお口の中やCTを確認してみなければ判断できません。
当院では初回無料カウンセリングを行っておりますので、他院でオールオン4を勧められて迷っている方や、どの治療方法が自分に合っているのかわからない方もお気軽にご相談ください。
その場で治療を決めていただく必要はありません。一度ご自宅に持ち帰っていただき、ご家族とも相談しながら、じっくり検討していただくことも可能です。
大切なのは、治療を急いで決めることではなく、10年後、20年後まで納得して使える方法を選ぶことだと当院では考えています。
