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最新の入れ歯にはたくさんの種類があり、「自分にはどれがいいのか、正直よく分からない…」と感じている方は多いと思います。特に40〜70代の方は、これからの食事や会話のことを考えると、このような心配ごとが尽きないのではないでしょうか。
「ちゃんと噛めるのか」
「入れ歯だと分からない見た目にできるのか」
「高いものを選んで失敗したくない」
この記事では、保険の入れ歯と自費の入れ歯の違いを押さえながら、「噛みやすさ」「見た目」「お口や体の状態」「予算」といったポイント別に、代表的な入れ歯の種類をわかりやすくご紹介します。
そして何よりお伝えしたいのは、最初から「この入れ歯一択」と決めつける必要はない、ということです。まずは今のお口の状態を知り、そのうえで「どうなりたいか」という希望を歯科医師に伝えることが、納得できる入れ歯選びにつながります。この記事が、その第一歩のお手伝いになれば幸いです。
ひとことで「入れ歯」と言っても、実はいろいろなタイプがあります。歯が何本残っているかによって「部分入れ歯」と「総入れ歯」に分かれますし、保険診療か自費診療かによっても、選べる材質や見た目、薄さなどが変わってきます。
たとえば、保険でよく使われるレジン床義歯(プラスチックの入れ歯)、薄くて丈夫な金属床義歯、金属のバネが目立ちにくいノンクラスプデンチャー、やわらかいシリコーンを使った入れ歯、磁石でカチッと固定するタイプ、精密な仕組みで支えるテレスコープ義歯、コンピューター技術を使ったデジタルデンチャー、インプラントを土台にしたオーバーデンチャーなど、名前だけでもたくさんあります。
ここからは、まず「部分入れ歯と総入れ歯の違い」「保険と自費の違い」「どうやって種類を絞っていくのか」という順番で、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
入れ歯を考えるとき、最初に大きな分かれ道になるのが「部分入れ歯」か「総入れ歯」か、という点です。
部分入れ歯は、まだ自分の歯が何本か残っていて、抜けてしまったところだけを補う入れ歯です。残っている歯に小さな金属のバネや専用の装置を引っかけて、入れ歯を支えます。上の歯だけ、下の歯だけといった作り方もできますし、片側だけ・両側にまたがる形など、お口の状態に合わせて形が変わります。
一方、総入れ歯は、上あご、または下あごの歯がすべてなくなってしまった場合に使う入れ歯です。歯ぐき全体を土台にして、「ぴったり吸い付く感じ」や、頬や舌の筋肉の動きを利用してお口の中で安定させます。
「奥歯が何本か抜けてきたから、もう総入れ歯にするしかないのかな…」と心配される方もいますが、歯が数本残っている場合は、多くのケースで部分入れ歯を検討します。逆に、残っている歯がぐらぐらしていたり、むし歯や歯周病が重度で支えとして使えない場合は、思い切って総入れ歯にした方が、長い目で見て安定することもあります。
大切なのは、「歯が何本残っているか」だけで決めるのではなく、残っている歯の状態や、歯を支えている骨の量、歯ぐきの状態などを総合的に見て判断することです。
次に、多くの方が気になる「保険の入れ歯」と「自費の入れ歯」の違いについてです。どちらも「噛めるようにする」という目的は同じですが、使える材料や作り方に違いがあり、それが見た目や薄さ、フィット感に反映されます。
保険の入れ歯は、レジンというプラスチックの材質が中心で、歯ぐきの部分もピンク色のプラスチックで作られます。しっかりした厚みを持たせる必要があるため、どうしても少しボリュームが出やすく、「最初は話しづらい」「大きく感じる」といった違和感が出る場合があります。ただ、費用を抑えられること、壊れたときに修理がしやすいことは大きなメリットです。
自費の入れ歯になると、選べる材料がぐっと増えます。たとえば、薄くて丈夫な金属床を使えば、保険の入れ歯より薄く仕上げられるので、口の中がすっきりして発音もしやすくなり、飲み物や食べ物の温度も感じやすくなります。また、金属のバネを見えにくくするノンクラスプデンチャーや、やわらかいシリコンを組み合わせたタイプなど、見た目やつけ心地を重視した設計もしやすくなります。
一方で、自費の入れ歯はどうしても費用が高くなりますし、素材によっては修理が難しいものもあります。金属を使う場合は、金属アレルギーの有無も確認が必要です。
「保険だから悪い」「自費だから絶対に良い」ということではなく、以下のようなポイントを踏まえて、「保険でできる範囲」と「自費ならここまでできる」という違いを知っておくことが大切です。
そのうえで、自分にとって納得できる落としどころを、一緒に探していくイメージを持っていただけるとよいと思います。
ここまで読んで、「種類が多すぎて、やっぱり迷ってしまう」と感じたかもしれません。実際、入れ歯の種類選びは、患者さん一人で決めるものではなく、歯科医師と話し合いながら少しずつ絞り込んでいくものです。
まずは、お口の中の状態を詳しく調べます。レントゲン写真などで骨の高さや残っている歯の状態を確認し、歯ぐきの状態や噛み合わせの癖などもチェックします。糖尿病や心臓病、骨粗しょう症などのご病気、飲んでいるお薬によっては、選べる治療の範囲が変わることもあるため、全身のことも含めて相談します。
そのうえで、「何を一番大切にしたいか」を一緒に整理していきます。
たとえば、「今までのようにしっかり噛んで食事を楽しみたい」「人前で話すことが多いので、とにかく見た目を自然にしたい」「とりあえず費用を抑えて慣れてみたい」など、人によって優先したいことはさまざまです。
検査結果とご希望を合わせて考えながら、「この部分は保険の入れ歯でも対応できます」「ここまでの見た目や噛みやすさを求めるなら、この自費のタイプも候補になります」といった形で、いくつかの選択肢を提案してもらうのが理想的です。場合によっては、模型や仮の入れ歯を使って、噛み合わせの感じを試しながら決めていくこともあります。
大事なのは、「どの種類が一番一般的か」「費用が一番安いのは何か」ではなく、「自分の体と生活に合っているかどうか」です。分からないことや不安なことは、遠慮せずに歯科医師に質問しながら、納得できる入れ歯を探していきましょう。

同じ「入れ歯」でも、土台となる材質や中の構造が変わるだけで、厚みや重さ、つけ心地は大きく違ってきます。プラスチックのようなレジンでしっかり厚みを出したタイプもあれば、金属を使って薄く軽く仕上げたタイプ、歯ぐきに当たる部分をやわらかい素材でカバーしたタイプなど、特徴はさまざまです。
ここでは、保険診療でよく使われるレジン床義歯、自費診療で選ばれることが多い金属床義歯やシリコーン義歯、さらにコンピューター技術を活用した最新のデジタルデンチャーについて、それぞれのメリットと注意点を、できるだけわかりやすくご紹介していきます。ご自身の「違和感を少なくしたい」「長く使いたい」といった希望と照らし合わせながら読んでみてください。
レジン床義歯は、保険診療で作ることができる、もっとも一般的な入れ歯です。歯ぐきにあたる土台の部分を、レジンというプラスチックに近い材質で作ります。歯ぐきの色に似せたピンク色をしていて、歯の部分も同じレジンでできていることが多いです。
保険で作れるため費用を抑えやすく、「まずは入れ歯に慣れたい」という方にとっても始めやすい選択肢です。また、レジンは加工や修理がしやすい材質なので、使ううちに少し合わなくなってきても、削ったり盛り足したりして調整しやすいという利点があります。歯を抜いた直後に、とりあえずの「仮の入れ歯」として使う際にもよく選ばれます。
一方で、強度を保つためにどうしてもある程度の厚みが必要なため、「口の中がもたつく感じがする」「舌が当たって話しづらい」といった違和感を覚える方もいます。上あごの総入れ歯の場合、口蓋(上あごの天井部分)を広く覆う形になるので、味や温度を感じにくいと感じることもあります。
レジン床義歯は、最新の入れ歯と比べると特別な機能はありませんが、「保険の範囲でできる標準的な入れ歯」として、他の種類と比較する際の基準になります。ここから、「もう少し薄い方がいい」「もう少し目立ちにくくしたい」など、次のステップを考えるきっかけにもなります。
金属床義歯は、歯ぐきに接する土台の大部分を金属で作る入れ歯です。レジン床義歯と比べて大きな違いは、「薄く、丈夫にできる」という点です。薄くても金属がしっかり支えてくれるので、口の中がすっきりして、「厚ぼったさ」がかなり軽減されます。
上あごの総入れ歯の場合、金属部分が上あごの天井にあたるので、食べ物や飲み物の温度が伝わりやすいのも特徴です。「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく感じたい」という方にとって、食事の楽しみが戻りやすいタイプと言えます。また、変形しにくく、長く使っても安定しやすいというメリットもあります。
ただし、自費診療となるため費用は高くなります。使う金属の種類によっても価格や特徴が異なり、金属アレルギーがある方は事前の確認が必要です。レントゲン撮影の際には、金属部分が白く写りやすいなどの注意点もありますが、診療の妨げになることはほとんどありません。
金属床義歯は、レジン床義歯で「どうしても厚みが気になる」「もっと快適に長く使いたい」と感じる方に向いている選択肢です。どの金属を使うか、どの範囲を金属にするかは、お口の状態やご希望に合わせて決めていきます。
シリコーン義歯や「やわらかい入れ歯」と呼ばれるタイプは、歯ぐきに当たる面をやわらかいシリコーン素材で覆った入れ歯です。土台全体をやわらかくするものもあれば、レジンや金属の入れ歯の外側だけをシリコーンでコーティングするタイプもあります。
大きなメリットは、歯ぐきに当たる感触がやさしくなることです。硬い入れ歯が当たって痛みが出やすい方、歯ぐきが痩せていて骨の形がゴツゴツしている方などには、クッションのような役割を果たし、噛んだときの衝撃をやわらげてくれます。フィット感が良くなることで、「外れそうで怖い」という不安が軽くなる場合もあります。
一方で、シリコーンはやわらかい分、レジンや金属に比べるとどうしても擦り減りやすく、経年劣化も避けられません。使い方によっては、汚れが付着しやすくなったり、においが残りやすくなったりすることもあるため、毎日の丁寧な清掃と、歯科医院での定期的なチェックが欠かせません。また、自費診療になるため、費用もある程度かかります。
「固い入れ歯がどうしても痛くて続かなかった」「骨が痩せていて普通の入れ歯だとつらい」といった方には、検討する価値のある選択肢です。ただし、すべての人に向くわけではないため、自分の歯ぐきの状態や噛む力を見てもらったうえで、「どこまでやわらかさを取り入れるか」を一緒に考えることが大切です。
最近は、コンピューターや専用の機械を使って入れ歯を設計・製作する「デジタルデンチャー」と呼ばれる方法も広がってきています。CAD/CAM義歯やBPSデンチャーなどがその代表で、従来のようにすべてを手作業で作るのではなく、データをもとに立体的に削り出したり、精密な型取りのステップを踏んだりするのが特徴です。
たとえば、型取りの段階でお口の動きや噛み合わせの高さを細かく記録し、そのデータを使って入れ歯の形をコンピューター上で設計していきます。そのうえで、専用の機械が樹脂のブロックを削り出して土台を作ることで、厚みや強度が均一になりやすく、ひび割れなどのトラブルを減らしやすいとされています。
BPSデンチャーのように、何度か試着の段階を設けて、実際にお口の中で発音や表情を確認しながら微調整を重ねていくシステムもあります。「見た目」「噛み合わせ」「発音」のバランスを重視し、最終的な仕上がりをイメージしやすいように工夫された流れになっているのが特徴です。
ただし、これらの方法も基本的に自費診療のため費用が高く、対応している歯科医院もまだ限られています。デジタルだからといって、必ずしも誰にとっても完璧な入れ歯になるわけではなく、最終的には歯科医師や技工士の調整や技術も重要です。

「入れ歯なのは仕方ないけれど、できれば人に気づかれたくない」「仕事や趣味で人前に出るから、見た目はできるだけ自然にしたい」という方も多いと思います。部分入れ歯の場合、とくに気になりやすいのが、歯にかかる金属のバネです。笑ったときや話しているときに、キラッと光るのがどうしても気になる、という声もよく聞かれます。
近年は、金属のバネを使わずに歯ぐきに似た色の樹脂で支える「ノンクラスプデンチャー」や、歯の根やインプラントと磁石を組み合わせて固定する「磁性アタッチメントデンチャー」、見た目と安定感の両方を追求した「テレスコープ義歯」など、見た目に配慮した最新の入れ歯も増えてきました。
大切なのは、見た目だけを優先しすぎて噛みにくくなってしまわないことです。見た目の自然さと、しっかり噛めること、その両方のバランスをとりながら、自分のライフスタイルに合った方法を選んでいくことが大事になります。ここでは、見た目を重視した代表的な入れ歯の種類を、できるだけわかりやすくご紹介します。
ノンクラスプデンチャーは、その名の通り「クラスプ=金属のバネ」を使わない部分入れ歯です。歯ぐきに近い色のやや弾力のある樹脂で、残っている歯を抱え込むようにして支えるため、口を開けたときに金属がキラッと見えないのが大きな特徴です。
見た目が自然なだけでなく、金属のバネが引っかかるときの違和感がなくなり、「入れ歯をつけている感じが少ない」と感じる方もいます。樹脂で歯を包み込むように支えることで、残っている歯への引っ張る力がやわらぎ、負担をやさしく分散できることもあります。前歯のあたりに部分入れ歯が必要な方や、人と接するお仕事をされている方には、検討されることが多いタイプです。
一方で、デメリットもきちんと知っておく必要があります。樹脂でできている部分は、金属に比べるとどうしても割れやすく、長く使ううちに少しずつ変形することもあります。壊れ方によっては、従来のレジン床より修理が難しい場合もあり、「少しでも長く持たせたい」という方には、取り扱いに注意が必要です。また、自費診療となるため、保険の入れ歯より費用は高くなります。
同じノンクラスプデンチャーでも、失っている歯の本数や場所、残っている歯の状態によって向き不向きがあります。歯を支える骨が大きく減っている場合や、支えとなる歯が少ない場合には、別の方法のほうが安心なこともあります。「前歯の金属が気になる」「できるだけ自然な見た目にしたい」という希望を伝えたうえで、自分のお口にノンクラスプが向いているかどうかを相談するのがよいでしょう。
磁性アタッチメントデンチャーは、歯の根やインプラントの上に小さな金属を取り付け、入れ歯側にも磁石を組み込んで、磁力でカチッと固定する入れ歯です。入れ歯を支える部品が見えにくく、外から見ると普通の入れ歯と変わらない見た目で使えるのが特徴です。
磁石でしっかり引きつけ合うため、一般的な部分入れ歯や総入れ歯に比べて外れにくく、噛んだときの安定感が出やすくなります。食事のときに「ガタガタする」「すぐにずれる」といったストレスが減り、「話していても安心感がある」と感じる方も少なくありません。また、入れ歯自体は取り外しができるので、外して洗って清潔に保てる点も安心材料です。
ただし、この方法を使うためには、土台となる歯の根がしっかり残っているか、あるいはインプラントを埋め込むことができる骨の状態であることが条件になります。歯の根が大きく割れていたり、歯ぐきの炎症が強かったりすると、まずはその治療が優先されることもあります。また、磁石の力を長く保つには、定期的なメンテナンスも大切です。金属や磁石の性質上、MRI検査などのときには取り扱いに注意が必要になる場合もあります。
磁性アタッチメントデンチャーは、「見た目は自然にしたいけれど、しっかり固定もしたい」「総入れ歯がどうしても安定しない」という方にとって、選択肢のひとつになりうる方法です。ただし自費治療のため費用は高くなりますし、適応できるかどうかもお口の状態によって変わるため、専門的な説明をわかりやすくしてくれる歯科医師とじっくり相談することが大切です。
テレスコープ義歯(コーヌスクローネ義歯を含む)は、残っている歯を「柱」として活かしながら、その上に入れ歯をかぶせるようにして固定する方法です。まず、支えになる歯を小さく削って「内冠」という金属の帽子をかぶせ、その上から「外冠」と呼ばれる入れ歯側の部品を重ねることで、筒と筒を差し込むようにピタッと安定させます。
見た目の面では、表側から金属部分がほとんど見えないように設計できるため、「入れ歯だと気づかれたくない」という方に適した方法です。また、力のかかり方が工夫されているため、噛んだときの揺れが少なく、残っている歯や歯ぐきに過度な負担がかかりにくいとされています。しっかり噛めて、見た目も自然に近づけたいという希望の両方を叶えやすい、精密な入れ歯と言えます。
その一方で、支えに使う歯をしっかり削って内冠をかぶせる必要があり、治療の回数や期間が比較的長くなること、技術的に難しい分、自費診療で費用が高くなりやすいことはデメリットです。支えになる歯の状態が良くない場合や、長期的に残せる見込みが薄い場合には、この方法が向かないこともあります。
テレスコープ義歯は、「多少時間や費用がかかっても、安定感と見た目の両方を大切にしたい」「総入れ歯にする前に、残っている歯を最大限活かしたい」という方と相性の良い治療です。
>>当院おすすめのドイツ式入れ歯|コーヌスクローネデンチャーについて

「総入れ歯にしてみたけれど、思ったより噛めない」「外れそうで怖くて、食べるものを選んでしまう」というお悩みはとても多く聞かれます。入れ歯は形さえ作れば終わりではなく、「どれくらい噛めるか」「どれくらい安心して使えるか」が、その後の食生活や時間の過ごし方に大きく影響します。
その中で、近年増えているのが、インプラントを土台にして入れ歯を固定する「インプラントオーバーデンチャー」という方法です。従来の総入れ歯よりも噛む力が出やすく、外れにくいのが特徴で、「がっちり固定するインプラント」と「取り外せる入れ歯」の中間のような位置づけと考えるとイメージしやすいかもしれません。
ここでは、まずインプラントオーバーデンチャーの基本的な仕組みをお伝えし、従来の総入れ歯との違いやメリット・デメリットについても触れていきます。
インプラントオーバーデンチャーは、あごの骨に数本のインプラント(人工の歯の根っこ)を埋め込み、その上に総入れ歯タイプの義歯を「パチッ」と留めて使う方法です。通常のインプラントのように、1本ずつ歯を作るのではなく、インプラントを「留め具」として使い、その上に入れ歯全体を支えます。
大きな特徴は、埋め込むインプラントの本数が比較的少なくて済むことです。全部の歯を1本ずつインプラントで作ろうとすると多くの本数が必要になりますが、オーバーデンチャーでは、あごの状態に応じて1〜4本ほどのインプラントで入れ歯を支えることが一般的です。そのため、費用や体への負担をある程度抑えながら、「しっかり噛める感覚」を目指すことができます。
また、入れ歯自体は取り外し式なので、寝る前に外して専用のブラシや洗浄剤でお手入れができます。インプラントのまわりの歯ぐきも見えやすくなるため、歯科医院での清掃やチェックもしやすく、清潔な状態を保ちやすいのも安心材料です。
「総入れ歯だとどうしても浮いてしまう」「入れ歯安定剤を手放せない」といった方にとって、インプラントオーバーデンチャーは、噛む力と安定感の両方を高めるための選択肢のひとつだと考えていただけるとよいと思います。
従来の総入れ歯は、あごの骨と歯ぐきの形、唇や舌の筋肉の動きを利用してお口の中で安定させます。そのため、骨が痩せてしまっている方や、あごの形が平らになっている方では、どうしても浮きやすかったり、外れやすかったりする場合があります。安定させるために大きく厚めに作らざるをえないこともあり、「話しづらい」「気を抜くと落ちそうで不安」という声が出やすくなります。
インプラントオーバーデンチャーの場合は、インプラントを「柱」にして入れ歯を留めるため、カチッと固定されやすく、噛んだときの力もあごの骨にしっかり伝わりやすくなります。固いフランスパンやお肉など、これまで避けていた食べ物にもチャレンジしやすくなり、「食べられるものが増えた」と感じる方も多くいらっしゃいます。
もちろん、良い面ばかりではありません。インプラントを埋め込むための手術が必要になること、治療期間がある程度かかること、保険が効かず費用負担が大きくなることは、しっかり理解しておく必要があります。また、インプラント部分や入れ歯の裏側にプラーク(歯垢)が残りやすくなるため、これまで以上に丁寧なお手入れと、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。
それでも、「今の総入れ歯よりも、もっとしっかり噛みたい」「外れる心配をなるべく減らしたい」という方にとっては、インプラントオーバーデンチャーは検討する価値の高い方法です。どちらが絶対に優れている、というよりも、ご自身の体の状態や希望に照らし合わせて、「どのレベルまでの噛みやすさや快適さを目指したいか」を一緒に考えていく形になります。
インプラントオーバーデンチャーに興味はあるけれど、「実際にはどんな流れで治療が進むのか」「どのくらいの費用や期間がかかるのか」「どれくらい噛めるようになるのか」など、具体的なイメージがわかないという方も多いと思います。
そのような方のために、インプラントオーバーデンチャーに特化した当院の専門サイトでは、治療のステップや、費用の目安、よくある質問などを、写真や図を交えながらより詳しくご紹介しています。総入れ歯からインプラント併用の入れ歯に移行したケースや、下あごだけオーバーデンチャーにしたケースなど、「自分の状況に近い例」を探すヒントにもなるはずです。
「今の総入れ歯で我慢し続けるしかないのかな…」と感じている方こそ、一度情報を整理してみると、新しい選択肢が見えてくることがあります。インプラントオーバーデンチャーについて、治療の流れや費用の考え方をもう少し具体的に知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。

ここまで、さまざまな入れ歯の種類をご紹介してきましたが、「で、結局どれが自分に合うの?」というのが一番気になるところかもしれません。最新の入れ歯だからといって、すべての人にとってベストとは限らず、年齢や全身の病気の有無、残っている歯や骨の状態、仕事や生活スタイル、そして予算や通院にかけられる時間など、いくつかの条件を重ねて考えていく必要があります。
このパートでは、入れ歯選びで迷ったときに振り返ってほしい「チェックポイント」を、できるだけわかりやすく整理していきます。難しい専門用語よりも、「自分のこと」に置きかえて考えやすい視点を中心にお話ししますので、頭の中でチェックシートを埋めるようなつもりで読んでみてください。
まず大切なのが、「体とお口の状態に合った入れ歯かどうか」という視点です。たとえば、糖尿病や心臓病、骨粗しょう症などの持病がある場合、外科手術を伴う治療は慎重な判断が必要になりますし、傷の治り方や感染のリスクにも配慮しなければなりません。毎日飲んでいるお薬の中に、出血しやすくなるものや骨に影響するものが含まれていることもあります。
また、お口の中の状態も人によって大きく違います。歯が何本残っているのかだけでなく、その歯がしっかりしているのか、グラグラしていないか、歯を支える骨がどれくらい残っているか、歯ぐきが下がっていないか…といった要素によって、「支えとして使えるのか」「土台ごとやり直した方がよいのか」が変わってきます。
年齢も、ひとつの目安になります。若い方なら、「将来を見据えてインプラントと入れ歯を組み合わせる」「今は部分入れ歯で歯を守りながら、将来の選択肢を残す」といった考え方ができますし、ご高齢の方で通院の負担が大きい場合は、「できるだけシンプルで扱いやすい入れ歯」「通院回数が少なくて済む方法」を優先することもあります。
そして、忘れがちですが、「定期的に通院できそうかどうか」も大切なポイントです。どんなに良い入れ歯でも、調整やチェックを受けずに長年使い続けると、合わなくなってきたり、歯ぐきに負担がかかったりします。ご自身の体力や生活リズムをふまえて、「無理なく通える範囲かどうか」まで含めて相談すると、後悔の少ない選択につながります。
入れ歯選びで欠かせないのが、予算との兼ね合いです。ご予算に余裕がある方の場合、「一度きりだから、高いものにしておけば安心」と考えてしまいがちですが、実際には、長く使ううちに調整や作り直しが必要になることもあります。そこで大事なのが、「初めの費用」だけでなく、「これから先にかかる費用」も含めて考えることです。
たとえば、自費の入れ歯は初期費用が高くなりがちですが、丈夫な材質や精密な作りにより、長く安定して使える場合があります。ただし、壊れたときの修理費用や、数年後に作り直す可能性もゼロではありません。一方、保険の入れ歯は費用を抑えられる分、作り直すタイミングが比較的早く来ることもあり、「数年ごとに新しくする前提」で考えることになるかもしれません。
また、メンテナンスにどれくらい手間や時間をかけられるかも、人それぞれ違います。毎日のていねいな清掃や、数か月ごとの定期検診をしっかり続けられそうなら、繊細なタイプの入れ歯でも良い結果を保ちやすくなりますし、「手が不自由で細かいお手入れは難しい」「家族にあまり負担をかけたくない」という場合は、多少シンプルでも扱いやすい入れ歯の方が安心なこともあります。
「高ければ正解」「安いからダメ」ということではなく、自分の生活や性格に合わせて、「無理なく続けられる範囲」を基準に考えていくことが大切です。そのうえで、歯科医師から費用の目安やメンテナンスの頻度を聞き、「これなら自分でも続けられそう」と感じるかどうかを、ひとつの判断材料にしてみてください。
最後に、「どこで相談するか」という歯科医院選びのポイントも、とても大切です。同じ入れ歯でも、診断の仕方や作り方、調整の丁寧さによって、使い心地は大きく変わってきます。
ひとつの目安になるのは、入れ歯に関する説明がどれくらい分かりやすいか、という点です。専門用語ばかりではなく、模型や写真、図を使いながら、「今のお口の状態」「考えられる選択肢」「それぞれの良い点・注意点」を、時間をかけて説明してくれるかどうかを見てみてください。質問に対して、きちんと向き合って答えてくれるかも大切です。
また、ひとつのやり方だけを強くすすめるのではなく、保険の入れ歯も自費の入れ歯も含めて、いくつかの選択肢を示してくれるかどうかも、チェックポイントになります。「今は保険で、将来こういう選択肢もあります」など、長い目で見た提案をしてくれると、将来の見通しも立てやすくなります。
さらに、入れ歯だけでなく、インプラントなどとの組み合わせも視野に入れてくれる医院であれば、「今できること」と「将来の可能性」の両方を踏まえた計画を立てやすくなります。レントゲンやCTなどの検査設備が整っているか、定期検診やメンテナンスの体制があるか、といった点も、長く通うことを考えると大事な要素です。
「この医院なら、分からないことをそのままにせず相談できそうだ」「ここなら長く付き合っていけそうだ」と感じられるかどうか。そんな直感も大切にしながら、自分に合った入れ歯を一緒に考えてくれるパートナーを探していきましょう。

せっかく作った入れ歯なのに、「痛くて長時間つけていられない」「すぐ外れてしまう」「うまく噛めない」といったお悩みを抱えたまま、我慢して使っている方は少なくありません。ところが、合わない入れ歯を無理して使い続けると、歯ぐきに傷ができたり、残っている歯やあごの骨に負担がかかったりして、かえって状態を悪くしてしまうことがあります。
大切なのは、「こんなものだろう」と諦めてしまわずに、早めに歯科で相談することです。少し調整すれば楽になるケースもあれば、土台となる歯ぐきや骨が変化していて、作り直したほうがかえって快適になるケースもあります。このパートでは、よくあるトラブルと原因、調整で済む場合と作り直しの目安、そして長く快適に使うためのメンテナンスのポイントについてお話しします。
入れ歯のトラブルと一口に言っても、その内容や原因はさまざまです。たとえば、「歯ぐきが当たって痛い」「口内炎のような傷ができる」といった場合は、入れ歯の一部が歯ぐきに強く当たっていることが多く、少し削るだけで楽になることがあります。また、「話していると外れそうで怖い」「食事の途中で浮いてくる」といった不安は、噛み合わせやあごの動きと入れ歯の形が合っていないことが原因になっている場合があります。
時間が経つにつれて、あごの骨や歯ぐきは少しずつ痩せていきます。その一方で、入れ歯は作ったときの大きさのままなので、だんだんと隙間ができて動きやすくなったり、特定の場所だけに強い力がかかるようになったりします。さらに、入れ歯自体も毎日の噛む力で少しずつ擦り減り、上下の歯の高さが変わってしまうことで、「前より噛みにくい」「顎が疲れる」と感じることもあります。
発音がしづらくて言葉がもごもごしてしまう、頬の内側や舌を噛みやすくなった、といったお悩みもよくありますが、決して「自分が不器用だから」ではありません。入れ歯の形や高さ、動き方が今のお口の状態に合っているかどうかが大きく関わっているため、原因を一緒に整理してもらうだけでも気持ちが楽になることが多いです。
入れ歯に違和感が出たときに、まず大切なのは「調整で済むのか」「作り直した方がよいのか」を見極めることです。たとえば、特定の一点だけが強く当たって痛い場合や、少し噛み合わせのバランスが崩れているといった場合は、入れ歯の裏側を少し削ったり、歯の高さをわずかに整えたりすることで改善することがよくあります。新しく作ったばかりの入れ歯は、とくに数回の微調整が必要になるのが普通です。
一方で、長年使い続けているうちに、歯ぐきや骨が大きく痩せてしまっている場合や、入れ歯の歯の部分がすり減り過ぎてしまっている場合は、部分的な調整では追いつかないことがあります。かみ合わせ全体が低くなり、顎関節や筋肉に負担がかかっているようなケースでは、根本的に作り直した方が、結果的に楽になることも少なくありません。
「少し痛いけれど、そのうち慣れるだろう」と我慢してしまうと、痛みを避けるために無意識に片側だけで噛むようになり、顔の筋肉のバランスが崩れてしまうこともあります。また、入れ歯の縁で歯ぐきを何度もこすっていると、慢性的な炎症につながることもあります。気になる症状が出たら、「こんなことで相談してもいいのかな」と遠慮せずに、まずは状態を見てもらうことが大切です。
入れ歯を長く気持ちよく使うためには、「作って終わり」ではなく、日々のお手入れと定期的なチェックが欠かせません。毎日、就寝前などに入れ歯を外して、水を張った容器の中で専用のブラシや入れ歯洗浄剤を使って清掃することで、目に見えない汚れや細菌の付着を減らし、においや着色、カビのような汚れを防ぐことができます。普通の歯磨き粉は入れ歯を傷つけてしまうことがあるため、入れ歯専用のものを使うと安心です。
同じくらい大切なのが、歯科医院での定期検診です。入れ歯そのものの状態だけでなく、残っている歯や歯ぐき、あごの骨の変化をチェックすることで、「そろそろ調整したほうがよい」「このまま使うとここに負担がかかりそう」といったサインを早めに見つけることができます。必要に応じて、入れ歯の裏側を少し盛り足したり、噛み合わせを整えたりしながら、今のお口に合った状態を保っていきます。
入れ歯だけをきれいにしていても、土台となる歯ぐきが炎症を起こしたり、残っている歯がむし歯や歯周病になってしまうと、せっかくの入れ歯もうまく支えられなくなってしまいます。残っている歯をできるだけ長く守ること、歯ぐきや骨の健康を保つことが、結果として入れ歯の寿命を延ばすことにもつながります。「入れ歯のことだから」と限定せず、お口全体のメンテナンスという気持ちで、定期検診を受けていくことをおすすめします。

この記事でお伝えしてきたように、入れ歯には、部分入れ歯と総入れ歯、保険と自費、レジン床・金属床・ノンクラスプ・シリコーン義歯、デジタルデンチャー、インプラントオーバーデンチャーなど、本当にたくさんの選択肢があります。
同じ年齢でも、残っている歯の本数や状態、あごの骨の量、持病や飲んでいるお薬、日々の生活スタイルは人それぞれ違います。「しっかり噛んで食事を楽しみたい」「人前で話すので見た目を大事にしたい」「費用はできるだけ抑えたい」など、何を一番優先したいかも人によって違います。
最新の入れ歯は、そのような違いに細かく合わせて選べるようになってきた、と考えていただくとよいかもしれません。
そのためにも、まずは自分のお口と体の状態を知ることがスタートになります。検査を通して「今、どんな状態なのか」を確認し、そのうえで「どうなりたいのか」「何が心配なのか」を、遠慮せず歯科医に伝えてみてください。そこから初めて、「保険の入れ歯でできる範囲」「自費の入れ歯で広がる可能性」「インプラントとの併用も含めた選択肢」などが、あなた専用の形で見えてきます。
「失敗したらどうしよう」と一人で抱え込む必要はありません。納得できる入れ歯選びのために、気になることがあれば、どうぞ気軽に歯科医院で相談してみてください。
当院はインプラントと入れ歯を併用する、インプラントオーバーデンチャーを専門的に扱っています。入れ歯でもしっかり噛みたい、食事を楽しみたいという方は、ぜひ当院へお問い合わせください。