コラム一覧

『前から2番目の歯だけ、まわりより明らかに小さい』

『歯と歯の間にすき間があって、笑うと目立つ』

『歯を大きくしたいけれど、削るのが怖くて踏み出せない』

ラミネートべニア・セラミッククラウン症例

矮小歯(わいしょうし)でお悩みの方から、当院にはこうしたご相談が多く寄せられます。ただ、ここには多くの方がご存じない事実があります。それは「歯が小さいこと」そのものが、セラミックやラミネートベニアにとって最も条件の良い状態だということです。もともと歯が小さいぶん、通常の歯を治療するときのように大きく削る必要がなく、ケースによってはほとんど削らずに形を整えることができます。

大阪・天王寺区でセラミック矯正と歯列矯正の両方に対応するヤスデンタルクリニックでは、院長・松井泰隆が矮小歯の審美治療を行っております。この記事では、矮小歯をどこまで自然に大きくできるのか、そして矮小歯だからこそ難しくなる技術的なポイントまで、実際の症例とあわせてご説明します。

目次

矮小歯(わいしょうし)とは?前歯が小さい・すき間が目立つのはなぜか

矮小歯とは、歯の発育段階で正常な大きさまで成長しなかった小さい歯のことを言います。

原因としては、遺伝的なものが大半を占めると言われており、生まれながらにして歯が小さくなってしまいます。

歯が小さいことで、「隙間ができる」「前歯の大きさのバランスが悪い」「乳歯がまだ残っている印象」になり、審美的な障害が出てしまいます。

矮小歯が出やすい歯と、見た目に現れやすい3つの特徴

矮小歯は、前から2番目の上顎側切歯や、前から8番目の親知らずに主に見られます。

親知らずは、現代では退化傾向にあり、元々生えてこない方も多くいらっしゃいますが、上顎の側切歯は、前歯で人目にも触れやすい部位のため、この部位が矮小歯になってしまうと、見た目が悪くなってしまいます。

中には、この上顎側切歯が作られずに、全く生えてこない方もいらっしゃいます。

矮小歯

上顎側切歯の矮小歯は、軽度のものであれば、筒状の円柱形をしており、重度になってくると先端が尖った円錐状の形になり、重度になればなるほど、より審美障害は深刻になり、治療の難易度も上がってきます。

矮小歯があることで、前歯の大きさのバランスが崩れ、歯と歯の間に隙間が開き、すきっ歯になってしまいます。

また、審美でも重要な、左右対称性(シンメトリー)やスマイルラインも悪くなり、乳歯が残っているかのような印象を与えてしまいます。

矮小歯をそのまま放置したときに起きること

上顎側切歯の矮小歯は、目立ちやすい位置にあるため、審美的な問題を抱えることがほとんどです。

「隙間が気になる」

「幼く見える」

「米粒のように見える」

「思いっきり笑えない」

皆様、矮小歯の状態により、様々なお悩みをお持ちでした。

矮小歯を気にするあまり、それがコンプレックスになり、思いっきり笑うことを躊躇うようになり、日常生活にも影響を及ぼします。

主に矮小歯が原因で、噛み合わせが悪くなったり、虫歯になりやすいなどの機能的な問題になることはありませんが、当院に来られる矮小歯相談の皆様のお悩みは、より深刻であることが多いように思います。

「歯が小さい」のか「歯茎に覆われて小さく見えている」のかで治療は変わります

歯が小さいから、必ず矮小歯というわけではありません。

歯が小さいにも種類があり、矮小歯のように「歯自体が小さい」場合や、実際には正常な歯の大きさがあるのにもかかわらず「歯茎に覆われて小さい」ように見えてしまう場合があります。

この両者をご自身で判断することは、難しい場合もありますが、主に歯の縦横比で大まかな判断をつけることが可能です。

日本人の歯の平均サイズ

このように前から2番目の上顎側切歯は、縦が10mm、横が7mmが日本人の平均サイズとなります。その縦横比の比率は、1:0.7となり、縦長の比率になります。

横幅は正常サイズがあるのに、長さだけ足りずに比率が1:1のように横幅の比率が高くなるようであれば、それは「歯茎に覆われて歯が小さい」可能性が高いと言えます。

矮小歯であれば、セラミックやラミネートベニアで治療を行いますが、歯茎に覆われている場合は、歯冠長延長術と言われる手術で余分な歯茎を切除して、歯を大きくすることが主な治療法になります。

この歯茎が余分に覆われることで歯が小さい場合は、ガミースマイルになる可能性もあります。

このように、歯が小さい原因が違えば、治療方法も全く異なるため、正確に診断を行うことが、とても重要になります。

>>歯冠長延長術についてはこちら

>>ガミースマイルについてはこちら

歯の実際の長さを計測する当院の治療方法

当院ではガミースマイルの一種である、歯茎に覆われて歯が小さく見えてしまう場合に行う、歯冠長延長術も専門的に行っており、全国から患者様にお越しいただいております。

症例

この「歯茎に覆われて歯が小さい」場合は、当院では様々な検査を行い診断を行っております。

  1. 歯の実測値の計測
  2. レントゲン撮影
  3. 歯肉溝の深さの測定
  4. 歯肉の厚み(バイオタイプ)

まずは、実際の歯の長さをミリ単位以下で計測して、縦横比の割合を把握します。

「横幅は正常なサイズがあるのに、縦の長さだけ短い…」など、すべての歯が平均的な縦横比の歯であるとは限らないため、とても重要な検査項目になります。

そして、レントゲン撮影を行うことで、歯茎の内部に隠れた本来の歯の長さを把握することができます。

本来の歯の長さを把握するためには、エナメル質とセメント質の境目(セメント-エナメルジャンクション:CEJ)を知る必要がありますが、このCEJがレントゲンで読影可能なため、当院では、必ず歯の長さの診断にはレントゲン撮影を行っています。

そしてその長さを裏付ける確固たる証拠として、歯肉溝の深さも計測しています。

歯と歯茎の境目にある溝(歯肉溝)は、正常値は1〜3mmほどですが、歯茎が余分に覆い被さることで、この歯肉溝が深くなっていき、ガミースマイルで歯が小さい方は、この溝の数値が5mmや6mmとなります。

歯肉溝の深さを計測することで、上記のレントゲン撮影の結果に相違が無いかを確認し、より確かな診断を行うようにしています。

そして、歯肉の厚み(バイオタイプ)も重要な検査項目となります。一般的に日本人は歯肉が薄い人種と言われていますが、「歯茎に覆われて歯が小さい」タイプのガミースマイルの患者様は、歯肉が厚い傾向にあります。

歯肉の厚みによって、切除する歯茎の切開の方法や、歯槽骨の形成量などが変わるため、患者様ごとに歯肉の厚みも検査するようにしています。

矮小歯はセラミック・ラミネートベニア治療に適した条件です

矮小歯は、元々歯が小さいため、セラミッククラウン・ラミネートベニア治療などの審美補綴に条件の良い治療となります。

通常であれば、セラミッククラウン・ラミネートベニア治療の際に、歯を削る必要がありますが、矮小歯は元々歯が小さいため、歯を削る量が少なく済むメリットがあります。

矮小歯の程度や形によっては、全く歯を削らずに治療することも可能です。

通常の歯より削る量が少なくて済む

セラミッククラン・ラミネートべニア

このように、セラミッククラウン治療では、歯を全面的に2〜3mm程度削るのに対し、ラミネートベニア治療では、歯の表面だけを0.2mm程度削るだけなので、ラミネートベニア治療の方が、圧倒的に歯を削る量が少なく、歯に優しい治療と言えます。

審美治療において、セラミッククラウンやラミネートベニアなどの補綴物を被せる・貼り付ける際に厚みの分だけスペースが必要になります。

削る量が足りていないと、その仕上がりは本来の歯の厚みより前方に出ることになり、出っ歯やボテっとしたセラミックの形になってしまいます。

矮小歯では、元々歯が小さいため、既にセラミッククラウンやラミネートベニアを装着するために必要な、歯を削られた状態に近いと言えます。

削る量が少ないほど、歯の寿命は守られます

歯を削る量が、少なければ少ないほど歯に負担が少なく、歯の健康は保たれます。

本来、一番長持ちして、トラブルが少ないのは、虫歯の治療痕などがない全く削られていない歯になります。

セラミッククラウンやラミネートベニアなどは、とても良い材料で審美治療にとっては、最も適した材料ではありますが、人の手で作られた人工物という認識は少なからず必要です。

人の手で作られたものは、どんなに精密に作られていても、必ず故障や修理などが必要になることがあります。

一方で天然歯は、きちんとメンテナンスをされていれば、100歳でもご自身の歯で噛んで食事を取られている方もいらっしゃるので、天然歯は、80年90年持たせることのできる、頑丈な組織と言えます。セラミッククラウンやラミネートベニアを80年持たせようと思うと、それは神業に近いかもしれません。

なので、歯の強度や健康を考えるのであれば、極力削る量は必要最小限にするのが重要です。

セラミッククラウンのトラブル

また、最も歯の寿命を短くしてしまう要因は、歯の内部の神経を抜いてしまうことです。

歯の神経には、虫歯ができた際にも痛みとして教えてくれたり、歯に栄養分を送り届ける重要な組織になります。

審美補綴治療をする際に、歯を大幅に削り、内部の神経を意図的に抜く歯科医院もありますが、これはオススメしません。

審美治療で、歯を綺麗にしてもすぐに歯を抜いてしまわないといけなくなっては、元も子もありません。

当院では、「歯を削る量は最小限」「神経は抜かない」歯に優しい審美治療を行っております。

ケースによっては「まったく削らない」ラミネートベニアも可能です

ラミネートべニア

矮小歯の状態によっては、全く歯を削らずにラミネートベニアで治療を行うことができます。

矮小歯の小ささが、丁度ラミネートベニアの厚み分と同じであったり、歯の位置や傾き、噛み合わせの条件などが問題なければ、歯を削らなくても審美的な治療が可能です。

上記症例の患者様は、東京より審美治療でお越しになられました。

上顎側切歯が矮小歯で、ガミースマイルも伴っていたため、2枚のラミネートベニアと、歯冠長延長術を行いました。

この患者様の上顎側切歯は、そこまで重度の矮小歯ではないため、歯の形状が筒形の円柱形をしており、歯のスペースに対して、丁度真ん中に位置していたため、両隣に均等にスペースがある状態でした。

過去に矯正治療を行っていたため、噛み合わせも良い状態だったため、全く歯を削らずにラミネートベニアの治療を行うことができました。

>>削らないラミネートベニア専門サイトはこちら

【症例】米粒のように小さい歯を、削らずに自然な大きさへ整えた治療

矮小歯、ラミネートべニア

前章の東京よりお越しいただいた患者様と同症例を、より詳しくご紹介します。

歯が小さいガミースマイルと、上顎の左右2番目の歯の矮小歯の審美治療でご来院されました。

「歯茎に覆われて歯が小さく見える」原因と、矮小歯による「歯自体が小さい」両方の原因がありました。

まずは、歯冠長延長術を行い、「歯茎に覆われて歯が小さく見える」原因を解決しました。

上顎の左右側切歯2本が、矮小歯で歯自体が小さいため、横幅も縦幅もサイズ的に足りておらず、隙間が開いており、スマイルラインも整っていない状態でした。

ちょうどセラミックを入れるのに必要な厚み分と同じサイズで、歯が小さい状態だったため、歯を全く削ることなく、このままラミネートベニアの型取りを行い、装着を行っております。

歯冠長延長術とラミネートベニアの治療後は、ガミースマイルが改善するだけでなく、歯の輪郭も丸みが出ることで、より審美的になり、矮小歯も本来の歯のサイズになることで、隙間がなくなり、スマイルラインも綺麗に整えることができました。

ラミネートベニアは、天然歯と調和して自然に仕上げることができます。

>>この症例についてさらに詳しくはこちら

矮小歯を大きくする4つの治療法と、当院の治療選択の基準

矮小歯の治療では、もともとの歯そのものが小さいため、何らかの方法で歯の大きさや形を整える必要があります。

矮小歯を大きくする方法には、主にラミネートベニア、セラミッククラウン、ダイレクトボンディングなどがあり、歯並びや隙間に問題がある場合には、矯正治療を組み合わせることもあります。

どの治療法が適しているかは、単に「歯がどれくらい小さいか」だけでは決まりません。歯の形や大きさ、隙間の量、歯並び、噛み合わせ、エナメル質の状態、そして患者さまが希望される仕上がりなどによって、治療の選択は変わります。

それぞれの治療法には適応があり、メリット・デメリットも異なります。ここからは、それぞれの特徴と、当院ではどのような基準で治療法を選択しているのかについて詳しく解説します。

ラミネートベニア|歯の表面に薄いセラミックを貼って形と大きさを整える

ラミネートベニアは、歯の表面に薄いセラミックの板を貼り付ける、付け爪のような治療になります。歯の削除量は、全く削らない0.0mm〜0.3mm程度とセラミック治療の中でも最少量となります。

すきっ歯と矮小歯

上記症例のように、軽度〜中程度の矮小歯やすきっ歯、軽度の変色にも対応できます。

当院で仕上げるラミネートベニアは0.1mmと極薄のものを採用しているため、歯をほとんど削らずに治療でき、歯の神経にも影響を与えず行うことができます。

一方で、0.1mmの極薄のラミネートベニアで、歯の見た目や形、色味を表現しなければならないため、変色が強い場合は、内部の色を透過してしまい、適応にならないこともありますし、あまりにも歯が小さい重度の矮小歯などは、ラミネートベニアの接着面積が少なくなり、強度が落ちてしまうので、適応にならないこともあります。

また、噛み合わせが強い場合や、歯の位置が大きくズレている・隙間が大きいすきっ歯の場合なども、ラミネートベニアが破折するトラブルも起こりやすくなるため、適応にはならないことがあります。

ラミネートベニアは、歯への負担も少なく、審美治療を行うことができる素晴らしい治療ではありますが、トラブルを避けるためにも、適応症をしっかり診断することが重要です。

>>ラミネートベニアについてさらに詳しくはこちら

セラミッククラウン(被せ物)|歯が極端に小さい・すでに被せ物がある場合

矮小歯の治療を行う2つ目の方法に、セラミッククラウン(被せ物)があります。

セラミッククラウンは、歯の全面を360度、筒型に削って被せ物を行う治療になります。

一般的には、差し歯とも言われていますが、ラミネートベニアに比べると、歯を削る量は多くなり、歯への負担は、セラミッククラウンの方が大きくなりますが、重度の矮小歯・隙間・変色などに適応ができる方法になります。

破折のリスク

上記症例のように、歯が小さすぎる矮小歯にラミネートベニアで治療を行うと、歯の表面積が小さいため、ラミネートベニアとの接着面積が少なくなり、強度が落ちることで破折のリスクが高くなります。

セラミッククラウンは、材料の厚みや幅を自由に変えることができるため、強度を保ちやすく、このような重度の矮小歯には最も適した治療法となります。

よって重度の矮小歯の症例においては、セラミッククラウン(被せ物)で治療を行い、強度を落とすことなく、歯の厚みや幅を変えた審美治療を行っております。

ダイレクトボンディング|その日のうちに樹脂で形を補う方法

ダイレクトボンディングとは、歯をほとんど削らずに、歯科用の樹脂(レジン)を直接歯に盛り足すことで、歯の大きさや形を整える治療法です。

ダイレクトボンディングは、軽度の矮小歯や、歯と歯の間のわずかな隙間を改善する場合などに適しています

歯科医師が口腔内で直接形を作っていくため、基本的には1回の治療で完了でき、セラミック治療と比較して費用を抑えやすいことが特徴です。

一方で、使用するレジンはセラミックと比較すると強度や耐久性が劣るため、欠けたり割れたりする可能性があります。また、経年的に変色や着色が生じることがある点もデメリットです。

そのためダイレクトボンディングは、軽度の矮小歯や、歯と歯の間のわずかな隙間を改善する場合などに適しています。

一方で、歯を大幅に大きくしたり、歯の表面を広範囲に覆って形を大きく変えたりする症例では、強度や耐久性の面から適応が限られます。また、セラミックのように歯全体の色調を大きく変えることも難しいため、矮小歯の大きさや形、希望する仕上がりによっては、ラミネートベニアやセラミッククラウンの方が適している場合があります。

>>ダイレクトボンディングについて詳しくはこちら

矯正治療との併用|すき間の「配分」を整えてから審美治療に進む

矮小歯をラミネートベニアやセラミッククラウンで治療する際、矮小歯そのものの位置がズレて生えている場合には、先に部分矯正で歯の位置を整えることで、より自然でバランスの良い仕上がりを目指すことができます。

例えば、矮小歯が前に出過ぎていたり、左右どちらかに寄っていたりすると、そのままラミネートベニアやセラミッククラウンを装着しても、左右の隙間が均等にならず、歯の形がいびつになってしまうことがあります。

そのため当院では、歯の位置のズレが大きい場合には、マウスピース矯正などを用いて、矮小歯を補綴治療に適した位置へ移動させてから、ラミネートベニアやセラミッククラウンによる治療を行うことがあります。

理想的な歯の形を作るためには、単に矮小歯を大きくすればよいわけではありません。矮小歯が正しい歯列のアーチ上にあり、さらに歯の左右にある隙間ができるだけ均等になるように、スペースの“ど真ん中”に歯を移動させることが重要です。

この状態を作ってから補綴治療を行うことで、左右どちらか一方だけを不自然に大きくする必要がなくなり、より左右対称で自然な歯の形を与えやすくなります。

どの治療を選ぶべきか|当院が治療法を判断する基準

矮小歯の治療法を選択する上で、当院がまず大切にしているのが、できるだけ健康な歯を削らずに治療することです。

一度削った歯を元に戻すことはできないため、治療が可能であれば、まずは歯を削る量が少ない方法から検討していきます。

歯を削る量が少ない治療法としては、ラミネートベニアやダイレクトボンディングがあります。

ラミネートベニアは、歯の表面に天然のエナメル質が十分に残っており、大きな虫歯や過去の治療による広範囲な詰め物などがない場合に適しています。歯を削る量を最小限に抑えながら、歯の大きさ・形・色を同時に改善できることが大きなメリットです。

一方で、ラミネートベニアはどのような歯にも行えるわけではありません。残っているエナメル質の量や歯の位置、噛み合わせ、過去の治療歴などによって適応が左右されるため、治療前に細かな診断が必要になります。

ダイレクトボンディングも、歯をほとんど削らずに治療できるという点では、歯に優しい治療法です。軽度の矮小歯や小さな隙間であれば、非常に有効な選択肢になります。

ただし、使用するレジンはセラミックと比較すると経年的な変色や着色、摩耗などが起こりやすいというデメリットがあります。

特に上顎の前歯は、笑ったときに非常に目立つ場所です。そのため、治療直後の仕上がりだけではなく、数年後の色調や形態の変化まで考えて治療法を選択することが大切だと考えています。

一方、セラミッククラウンは、ラミネートベニアやダイレクトボンディングと比較すると歯を削る量は多くなります。

しかし、歯が極端に小さい重度の矮小歯や、大きく形態を変える必要がある場合、強い変色がある場合、すでに大きな詰め物が入っている場合などでは、セラミッククラウンの方が適していることがあります。

当院では、セラミッククラウンを選択する場合でも、可能な限り健康な歯質を残し、安易に神経を抜くことなく治療することを大切にしています。

このように、「歯を削らない治療=すべての患者さまにとって最良の治療」というわけではありません。

矮小歯の大きさや形、残っているエナメル質の量、歯並び、噛み合わせ、歯の色、隙間の大きさなどによって、適した治療法は一人ひとり異なります。また、治療期間や費用、どこまで審美性を求めるのかによっても治療の選択は変わります。

そのため当院では、まずはできるだけ歯を削らない方法を検討し、その中から患者さまが希望される仕上がりを実現できる治療法を選択することを基本としています。

それぞれの治療法のメリット・デメリットをご説明した上で、患者さまのご希望もしっかりとお聞きし、一緒に治療方針を考えていくことが大切だと考えています。

矮小歯だからこそ難しい|仕上がりを分ける3つの技術的ポイント

矮小歯は、もともとの歯が小さいため、通常の歯と比較して削る量を少なくできるケースが多くあります。

そのため、一見すると「小さい歯を大きくするだけなので、比較的簡単な治療」と思われるかもしれません。

しかし実際には、歯が小さいからこその難しさがあります。

まず、もともとの歯が小さいということは、ラミネートベニアやセラミックを支えたり接着したりできる面積も小さくなります。

見た目だけを大きくするのではなく、治療後に外れたり欠けたりしにくいように、小さな歯に対して、いかに補綴物を安定させるかまで考えた設計が必要です。

また、矮小歯の治療では、小さな歯を周囲の歯と調和する大きさまで広げていくため、もともとの小さな歯から、大きくした部分への“つながり”をいかに自然に見せるかも仕上がりを左右します。

単純に横幅だけを広げてしまうと、根元は細いのに先端だけが大きい、不自然な歯になってしまうことがあります。

そのため、歯の根元から先端までの立ち上がりや丸み、隣の歯とのつながりまで細かく設計し、「もともとその大きさの歯が生えていた」ように見せることが重要になります。

さらに、綺麗な仕上がりを目指すためには、矮小歯だけを見るのではなく、左右の歯との大きさや形のバランス、歯肉の位置まで含めて考える必要があります。

このように、矮小歯の治療は単純に「小さい歯を大きくする治療」ではありません。

補綴物を安定させること、大きくした部分を自然につなげること、そして周囲の歯や歯肉と調和させ自然に見せること、様々なことを考慮して治療していく必要があります。

ここでは、当院が矮小歯を治療する際に特に重要だと考えている3つの技術的ポイントについて、詳しく解説します。

歯が片側に寄っていると、左右の「立ち上がり」の形が変わります

矮小歯の治療では、もともとの小さな歯を、周囲の歯と調和する大きさまで広げていきます。

その際に重要になるのが、もともとの小さな歯から、大きくした部分への“つながり”“立ち上がり”を、いかに自然に見せるかということです。

この部分の設計が、最終的な仕上がりの美しさに大きく影響します。

特に注意が必要なのが、矮小歯がスペースの中央ではなく、左右どちらか一方に寄って生えている場合です。

歯が片側に寄っている状態でラミネートベニアやセラミッククラウンによって左右の隙間を埋めようとすると、片側は補綴物を薄く作る一方で、反対側は大きく張り出すように厚く作らなければなりません。

その結果、左右で歯の“立ち上がり”が異なり、正面から見たときの形や丸みに左右差が生じ、自然な歯の形を作ることが難しくなります。

また、大きく張り出した側は、歯の根元から急角度に立ち上がる形になりやすくなります。

このような形態は見た目が不自然になるだけでなく、歯と歯肉の境目に汚れが溜まりやすくなり、虫歯や歯周病の原因菌の温床になってしまいます。

こうした問題を回避するためには、矮小歯が左右どちらかに偏ることなく、与えられたスペースの“ど真ん中”に位置していることが重要です。

歯が中央に位置することで、左右に必要となるラミネートベニアやセラミッククラウンの厚みを均等にしやすくなり、歯の根元から自然に立ち上がる、左右バランスの取れた形を作りやすくなります。

そのため当院では、矮小歯が大きく片側に寄っているなど、歯の位置に問題がある場合には、無理に補綴物だけで形を整えるのではなく、必要に応じて部分矯正を併用します。

先に矮小歯を補綴治療に適した位置へ移動させ、その後にラミネートベニアやセラミッククラウンで形を整えることで、より自然で美しく、清掃しやすい仕上がりを目指します。

尖った歯は被せ物がはまりにくい

矮小歯が重度になると、歯はより小さくなり、先端が尖った形状になってきます。

重度の矮小歯では、セラミッククラウン(被せ物)で治療を行うことが多くなりますが、ここで問題になるのが、小さく尖った歯に、いかに被せ物をしっかりと維持させるかということです。

茶筒の原理

被せ物は、イメージとしては「茶筒」のように、歯にスパッとはまり込む形を作ることで安定します。

茶筒は、上の蓋だけを持っても、下の筒が簡単に抜け落ちたりしないですよね?

これは、蓋と筒の接する面がほぼ平行で、互いに密接しているためです。

セラミッククラウンもこれと似ており、被せ物と歯が接する面をある程度平行に近づけ、十分な接触面積を確保することで、外れにくい形を作ることができます。

しかし、重度の矮小歯は、もともとの歯が非常に小さいうえに先端が尖っています。

そのため、通常の大きさの歯と比べて、被せ物を維持するために必要な、ある程度平行な面を十分に確保することが難しくなります。

尖った歯にそのまま被せ物を作ると、被せ物が歯にしっかりとはまり込まず、維持力が弱くなり、治療後に外れたり脱離したりする原因になります。

削るのではなく、樹脂で「盛り足して」円柱状に整えてから型取りする

矮小歯

重度の矮小歯は、上記写真のように歯そのものが非常に小さく、先端が尖った形をしているため、そのままでは被せ物がしっかりとはまり込むような、平行に近い形に整えることが難しくなります。

その結果、被せ物を維持する力が弱くなり、治療後にセラミッククラウンが外れたり、脱離したりする原因になります。

被せ物が外れにくい形に整えてから型取りを行います

そこで当院では、重度の矮小歯にセラミッククラウンを被せる際、健康な歯をさらに削って形を整えるのではなく、歯に樹脂を「盛り足す」ことで、被せ物が外れにくい形に整えてから型取りを行います。

尖っている部分の周囲に人工材料である樹脂を接着し、細く尖った歯を円柱状の形へと変えていきます。こうすることで、被せ物と接する面をできるだけ平行に近づけ、セラミッククラウンが歯にしっかりとはまり込む形を作ることができます。

「外れないようにするために歯をさらに削る」のではなく、「樹脂を盛り足して、外れにくい形を作る」ことで、健康な歯を削りすぎることなく、長持ちする治療を行うことができます。

歯の大きさだけを変えても、歯茎のラインが揃っていないと整って見えません

矮小歯の治療をはじめ、前歯の審美治療を行う際には、歯の大きさや形だけではなく、歯茎の高さが左右で揃っていることも非常に重要です。

どれだけ歯の形を綺麗に整えても、歯茎の高さがバラバラの状態では、それぞれの歯の見える長さが違ってしまいます。その結果、歯並び自体は悪くなくても、ガタガタとした不揃いな印象に見えてしまうことがあります。

当院では、より自然で綺麗な仕上がりをご希望される方には、必要に応じて歯冠長延長術を行い、歯茎の高さまで含めて整える治療を行っています。

歯冠長延長術

上記写真は矮小歯の症例ではありませんが、歯茎の高さが仕上がりの印象にどれほど影響するのかが分かりやすい症例です。

もともと歯並びそのものが大きく悪いわけではありません。

しかし、治療前はそれぞれの歯茎の高さがバラバラなため、前歯全体が不揃いな印象に見えていました。

そこで歯冠長延長術を行い、歯茎の高さを整えています。

歯並びを大きく動かしたわけではありませんが、歯茎のラインが揃うだけでも、まるで歯並びまで良くなったような整った印象に変わります。

これは矮小歯の治療でも同じです。

歯冠長延長術セラミッククラウン

矮小歯は、歯そのものが小さいだけではなく、歯茎の位置も周囲の歯と揃っていないことがあります。

その状態で矮小歯だけをラミネートベニアやセラミッククラウンで大きくしても、歯茎のラインが揃っていなければ、前歯全体として見たときに綺麗に整って見えないことがあります。

そのため、より審美性の高い仕上がりを目指す場合には、「小さい歯を大きくする」だけではなく、

歯冠長延長術によって歯茎の高さまで整えてから、最終的な歯の形を作ることも重要になります。

歯の大きさ・形と、歯茎のラインの両方を周囲の歯と調和させることで、より審美性の高い仕上がりを目指すことができます。

矮小歯の治療で「やらなきゃよかった」とならないために確認したいこと

当院では、他院で行ったラミネートベニアやセラミッククラウンの仕上がりに満足できず、やり直しを希望されて来院される患者さまの治療も行っています。

「歯が分厚く見える」「歯が前に出て見える」「左右で形が違う」「歯の色が不自然」「歯茎との境目が気になる」など、ご相談の内容はさまざまです。

これらは矮小歯に限ったご相談ではありませんが、もともとの歯が小さく、周囲の歯との大きさや位置関係まで考えて形を作る必要がある矮小歯では、治療前の設計が特に重要になります。

一度治療した歯をやり直す場合、最初の治療よりも歯を削る必要が生じたり、治療の選択肢が狭くなったりすることもあります。

だからこそ、最初の治療で「やらなきゃよかった」とならないために、治療を受ける前に確認していただきたいポイントがあります。

「分厚い」「出っ張った」仕上がりになってしまう原因

当院には、他院でラミネートベニアやセラミッククラウンの治療を受けたものの、「歯が分厚くなった」「以前より出っ歯に見える」「歯の形が不自然」といった仕上がりに悩まれ、やり直しを希望される患者さまも多く来院されます。

ラミネートベニアのやり直し

上記写真も、他院でラミネートベニアの治療を受けた後、仕上がりに満足できず、当院でやり直しを行った症例です。

治療前は、ラミネートベニアそのものに厚みがあり、正面から見ると歯の形が大きく、「ボテッ」とした仕上がりになっていました。

ラミネートベニアは、歯の表面に薄いセラミックを貼り付けて歯の形や色を変える治療です。

そのため、もともとの歯の位置や厚みを考えずに、その上からセラミックの厚みを足してしまうと、治療前よりも歯が分厚く、出っ歯のような仕上がりになってしまいます。

症例ビフォーアフター

横から見ると、ラミネートベニアを装着した前歯だけが前方へ大きく張り出し、出っ歯のように見える状態です。

治療後は側方から見ると、前方へ大きく張り出していた前歯が内側に収まり、すっきりとした歯の形に改善しています。

綺麗な歯を作るためには、正面から見た歯の形だけではなく、横から見たときの厚みや傾き、唇との位置関係まで考えて設計することが重要です。

この症例では、以前装着されていた分厚いラミネートベニアを除去し、セラミックの厚みや歯の形を一から見直して治療をやり直しました。

これは矮小歯の治療でも同じです。

「歯を大きくする=セラミックを厚くする」ではありません。

必要な部分に必要な厚みを与えながら、正面だけではなく横から見たときにも自然な位置に歯が収まるように設計することが、分厚く出っ張った仕上がりを防ぐために重要です。

>>ラミネートベニアで失敗しないためのポイントはこちら

「すぐ取れる」「欠ける」と言われる本当の理由

「ラミネートベニアはすぐ取れる」「セラミックは欠けやすい」と心配される患者さまもいらっしゃいます。

しかし、セラミックが外れたり欠けたりする原因の多くは、素材そのものではなく、歯の形や噛み合わせを含めた設計と、接着処理にあります。

特に重度の矮小歯は、もともとの歯が非常に小さく、先端が尖っているため、そのままセラミッククラウンを被せても十分な維持力を得ることができません。

そのため当院では、必要に応じて健康な歯をさらに削るのではなく、樹脂を盛り足して歯を円柱状に整え、セラミッククラウンがしっかりとはまり込む、外れにくい形を作ってから治療を行います。

また、ラミネートベニアでは、接着操作が最も重要になります。

エナメル質にしっかりと接着させることで、ラミネートベニアと歯が一体化し強度を得ることができます。

そのため、できるだけ健康なエナメル質を削らずに残し、接着できる面積を最大限確保することが、外れたり欠けたりするトラブルを防ぐために重要です。

さらに、噛み合わせや歯ぎしり・食いしばりによって、セラミックの一部分に強い力が集中しないように設計することも欠かせません。

完成したセラミックだけを見ても分かりませんが、実はセラミックを装着するまでの「見えない工程」が、その後の安定性や耐久性を大きく左右します。

当院では、「何を被せるか」だけではなく、「どうすれば外れにくく、欠けにくい状態を作れるのか」まで考えて設計することを大切にしています。

治療前に「症例」で仕上がりを確認しておくことが最も確実です

矮小歯の治療は、小さな歯を大きく変化させる治療だからこそ、治療後の仕上がりを言葉だけでイメージすることは簡単ではありません。

シミュレーションなどで治療後のイメージを確認することもできますが、実際にその医院で治療を行った症例を確認することが、仕上がりを知る最も確実な方法です。

症例を見る際には、単に「綺麗になっているか」だけではなく、自分と似たような歯の大きさや形、歯並びの患者さまが、実際にどのように変化しているのかを確認することが重要です。

また、複数の症例を見ることで、その医院がどのような仕上がりを得意としているのか、治療の技術力や審美性に対する考え方も見えてきます。

矮小歯の治療で後悔しないためにも、費用や期間だけで医院を選ぶのではなく、治療を受ける前に実際の症例をしっかり確認し、自分が希望する仕上がりと合っているかを確認することをおすすめします。

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まとめ:矮小歯はほとんど削らずに治せる|大切なのは素材より設計

矮小歯は、もともとの歯が小さいため、健康な歯をほとんど削ることなく、ラミネートベニアやセラミックなどで大きさや形を整えられることが多く、審美治療を行ううえで、負担の少ない歯といえます。

しかし、歯が小さいからこそ、単純に大きくすれば綺麗になるわけではありません。

周囲の歯とのバランスや歯の位置、小さな歯から大きくした部分への自然な“立ち上がり”セラミックを安定させるための設計、そして歯茎のラインまで含めて考えることが、自然で長持ちする仕上がりには重要です。

必要に応じて部分矯正を行ったり、樹脂を盛り足して歯の形を整えたり、歯冠長延長術で歯茎の高さを揃えたりと、「何の素材を使うか」だけではなく、「どのように設計して仕上げるか」が矮小歯治療の結果を大きく左右します。

ご自身の矮小歯に、ラミネートベニア、セラミッククラウン、ダイレクトボンディングなど、どの治療法が適しているのかは、実際の歯の大きさや位置、歯並び、噛み合わせ、歯茎の状態などを診断しなければ分かりません。

矮小歯の大きさや形でお悩みの方は、まずは一度カウンセリングにお越しください。

できるだけ健康な歯を削らず、患者さまごとに合った治療方法をご提案いたします。

監修者情報

松井泰隆 YASU DENTAL CLINIC 院長

松井泰隆 YASU DENTAL CLINIC 院長

東京歯科大学を卒業後、京都大学医学部附属病院で口腔外科を学び、その後審美歯科やインプラント治療を行う医療法人に勤務し分院長などを歴任。

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